KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

ピカレスクの肖像ー検証・猪瀬直樹『ミカドの肖像』盗用疑惑(その弐)

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 ・ゲイ六輔さんからの情報提供(ゲイ六輔さん、毎回ありがとうございます)で知りましたが、荒井香織氏による猪瀬直樹への阿諛追従ツイートから。

 猪瀬直樹さんの激深夜ツイッターを見ていると胸がすく。猪瀬さんが一家に一人いると困るけど、近所に一人いると地域共同体がいいアンバイになりそうだ。 RT @inosenaoki*1 「上から目線」という言葉を使うタイプがときどきツイッタ−上に現れるが、大成しない。卑屈だから。

3:41 - 2010年11月7日*2

 猪瀬さんは部活の先輩みたいでいい。 RT @inosenaoki 戦え、度胸と知性と感性があるなら。負け犬は去れ。

3:11 - 2010年11月29日*3

 猪瀬さんの叱咤には愛がある。ただ偉そうにどやしつけてるオラオラ系ではないと思う RT @cs5023 ついった読んでるだけだけど猪瀬さんすきになっちゃいそ。作品も購入予定…時間の問題。新手の宗教のよう…… RT @inosenaoki RT @araikaoru*4: 猪瀬さんは部活

14:22 - 2010年11月29日*5

 @inosenaoki ツイッター世論はやたらと石原都知事への風当たりが強いですね。猪瀬副知事体制を維持するため、ぼくは慎ちゃんに一票を投じました(こういうことを書くと一斉に叩かれそうですけど)。猪瀬さん、この戦争を乗り切るため、なにとぞよろしくお願いします。

3:36 - 2011年4月14日*6

 荒井香織氏が佐野眞一の盗用問題の追及に熱心なのも、元々猪瀬直樹の熱烈な信奉者であり、佐野の盗用を暴露した猪瀬に媚びへつらう目的もあったようです。それにしても、わざわざ猪瀬のために2011年の都知事選で石原慎太郎氏に投票し、その報告を猪瀬本人に直接リプライするなど、醜悪の極みというか、薄気味悪い茶坊主ぶりです。「猪瀬さんは部活の先輩みたいでいい。」のツイートは猪瀬も気に入ったらしく、リツイートされています。荒井氏が猪瀬の盗用疑惑を黙認しているのも、恩人に対する義理立てだけでないと考えられます。

 ・稀代の詐欺師だった佐村河内守の件ですが、僕からも一言。経歴やゴーストライター云々もさることながら「全聾の作曲家」という設定で世間を欺き、「現代のベートーベン」として商魂逞しく売り込んでいった経緯などが、日垣センセイの「弟を少年事件で殺された!」という犯罪被害者遺族詐称にそっくりです*7。日垣センセイも弟を同級生に殺された悲劇の当事者としてアピールすることで、悲劇にもめげずに犯罪被害者遺族の立場から告発を続ける気鋭の物書きとして、読者のみならず少ならぬ同業者からも涙と共感を誘い、言論活動の箔付けにも利用していました。そもそも犯罪被害者遺族の設定が無ければ、少年法及び刑法39条問題であれほど名をはせることもなかったでしょう。人は悲劇であれ、「感動」「お涙頂戴」のストーリーには弱いものですから……。


●『ミカドの肖像』、単行本も文庫版も「参考文献」にネタ本の記載無し!

 本題。猪瀬直樹の代表作『ミカドの肖像』の単行本は1986年12月頃に上梓され、以後、複数回に渡って新装版が出ています。文庫版も新潮文庫の他、小学館文庫からも刊行されてロングセラー*8になるなど、単行本4種類、文庫2種類の計6種類もあります。

 刊行順に整理すると、次のようになります。

・『ミカドの肖像』(小学館、1986年12月20日初版第1刷発行)
・『ミカドの肖像 プリンスホテルの謎』(小学館ライブラリー、1991年8月1日初版第1刷発行)
・『ミカドの肖像(上)』(新潮文庫、平成四年二月二十五日発行)
・『ミカドの肖像(下)』(新潮文庫、平成四年二月二十五日発行)
・『同時代ノンフィクション選集 第8巻 現代史の死角』(文藝春秋、平成五年六月三十日第一刷)
・『日本の近代 猪瀬直樹著作集5 ミカドの肖像』(小学館、2002年5月1日初版第1刷発行)
・『ミカドの肖像』(小学館文庫、2005年4月1日初版第1刷発行)

 この内、『ミカドの肖像 プリンスホテルの謎』は「第I部プリンスホテルの謎」を独立刊行したものです。『同時代ノンフィクション選集 第8巻 現代史の死角』とは、ノンフィクション作家の柳田邦男氏の編集による選集であり、『ミカドの肖像』は同本のP181〜467に収録されています。

 余談ながら、柳田氏は第3回新潮ドキュメント賞の選考委員の一人として、日垣センセイのペテン本『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)に同賞を贈るなど、およそノンフィクション界の重鎮とは思えないほどの大失態も犯しています*9

 上記の『ミカドの肖像』シリーズで、「参考文献」リストは『同時代ノンフィクション選集 第8巻 現代史の死角』以外の全著作にあります。しかし、いずれもネタ本である早川和廣『堤義明 悪の帝王学』(エール出版社、1981年12月)草野洋『西武商法 悪の構図』(同、1983年3月)の書名は載っていません。念のため、本文も調べましたが、早川及び草野本に関する注釈・引用文の類は一切ありませんでした。

 因みに、単行本の「あとがき」には取材協力として池田房雄氏と岩瀬達哉の名前が明記されています。

 スタッフは取材協力では勇猛果敢に突進する池田房雄氏と最新緻密にフォローする岩瀬達哉氏のコンビネーション、翻訳協力には英・独・仏・露・伊の五か国語を操る“怪人”島田孝夫氏、資料協力は国会図書館をわが庭のごとく通暁する斉藤洋子さんの四人。いずれも一騎当千の活躍でした。

猪瀬直樹ミカドの肖像』(小学館、1986年12月20日初版第1刷発行)P585

 
●ネタ本の著者・草野洋氏のプロフィール

 ところで、猪瀬への抗議を続けていたというネタ本『西武商法 悪の構図』の著者、草野洋氏とはどういう人物なのか。事実上、最後の著作となった『事件小説集 守銭奴たちの四季』(雷韻出版、2005年11月25日第1刷発行)によると、下記の通りです。

草野洋(ジャーナリスト)

昭和9年、北海道夕張市で生まれる。その後、旧樺太へ渡り戦後引き揚げ、室蘭で食品会社に勤務。昭和35年に上京して、文芸同人誌を主宰し、その後、経済誌を発行、政治・経済の告発ものを主体とした記事を雑誌や新聞に寄稿し、現在は企業小説も執筆中。
著書に「黒幕研究」、「日産自動車残酷物語」、「小説早稲田大学の崩壊」、「西武商法・悪の構図」、「住友銀行の謀略」、「構造汚染」、「ODAの闇」などがある。現在は『環境ジャーナル』発行。

インターネットマガジン『噂の仕置人』
http://www.uwasanoshiokinin.com*10

環境情報センター主幹
日本作家クラブ理事
社団法人日本地方新聞協会
    日本報道クラブ副代表幹事
内閣府認証日本INGO副理事長
JLNAブロンズ賞受賞
日本作家クラブ文芸賞受賞(2回)

草野洋『事件小説集 守銭奴たちの四季』(雷韻出版、2005年11月25日第1刷発行)裏カバー


 このプロフィールからも、例の『西武商法・悪の構図』が確認できます。

 何故、猪瀬はネタ本の存在をひた隠しに隠していたのか。草野氏とはどのようなやり取りがあったのか。ネタ本には具体的に何が書かれていたのか。次回は、前回のエントリーでも取り上げた会員制月刊誌『ベルダ』(2012年12月号)の告発記事「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』参考文献リストにも載せず」の有料部分の記述を元に、検証します。


★参考資料

草野洋 - Wikipedia

http://straydog.way-nifty.com/yamaokashunsuke/2006/02/post.html

守銭奴たちの四季 | 経済・企業小説よむ読む

ミカドの肖像(小学館文庫)

ミカドの肖像(小学館文庫)

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

*1:猪瀬直樹ツイッターアカウント。

*2:Arai Kaoru on Twitter: "猪瀬直樹さんの激深夜ツイッターを見ていると胸がすく。猪瀬さんが一家に一人いると困るけど、近所に一人いると地域共同体がいいアンバイになりそうだ。 RT @inosenaoki 「上から目線」という言葉を使うタイプがときどきツイッタ-上に現れるが、大成しない。卑屈だから。"

*3:Arai Kaoru on Twitter: "猪瀬さんは部活の先輩みたいでいい。 RT @inosenaoki 戦え、度胸と知性と感性があるなら。負け犬は去れ。"

*4:荒井香織氏のツイッターアカウント。

*5:Arai Kaoru on Twitter: "猪瀬さんの叱咤には愛がある。ただ偉そうにどやしつけてるオラオラ系ではないと思う RT @cs5023 ついった読んでるだけだけど猪瀬さんすきになっちゃいそ。作品も購入予定…時間の問題。新手の宗教のよう…… RT @inosenaoki RT @araikaoru: 猪瀬さんは部活"

*6:Arai Kaoru on Twitter: "@inosenaoki ツイッター世論はやたらと石原都知事への風当たりが強いですね。猪瀬副知事体制を維持するため、ぼくは慎ちゃんに一票を投じました(こういうことを書くと一斉に叩かれそうですけど)。猪瀬さん、この戦争を乗り切るため、なにとぞよろしくお願いします。"

*7:[日垣隆「弟の死」]記事一覧 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*8:小学館文庫の帯(2005年4月1日初版第1刷発行、2012年12月16日第5刷発行)には、「累計30万部突破!」と書かれている。

*9:WOLF'S DEMAー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』の評判 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*10:現在はリンク切れ。