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これまで当ブログでは、会員制の月刊誌『ベルダ』(2012年12月号)の告発記事「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』 参考文献リストにも載せず」を下敷きに、猪瀬直樹の代表作『ミカドの肖像』の盗用疑惑などを検証してきました。
[猪瀬直樹『ミカドの肖像』]記事一覧 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
すると、先日、上記のベルダ記事の執筆者I氏から、取材の裏話及び思い出話等を語ってくれたメールが来ました。I氏の了解を得たので、その一部を引用して紹介したいと思います。貴重な打ち明け話をしていただいたI氏に感謝します。
●『ミカドの肖像』取材の内幕
I氏によると、まず『ミカドの肖像』の西武鉄道及び堤康次郎に関するデータ取材は、池田房雄氏ではなく、岩瀬達哉が担当していたという。また『ミカドの肖像』の連載は、当初から大宅賞(大宅壮一ノンフィクション賞受賞)を目指した小学館の社内プロジェクトだったそうです。
「ミカドの肖像」の西武鉄道や堤康次郎に関するデータ取材を池田氏は担当していません。なぜその背景や経緯をよく知る池田氏が担当しなかったのかと言うと、池田氏は、自ら取材執筆したいテーマ「白い血」があったためです。それで西武鉄道について何も知らない岩瀬氏が取材を担当することになったのです。さらにここには学習雑誌やマンガの売上実績しかない小学館のジャーナリズム出版社への脱皮と憧憬、そして猪瀬氏の信州大学人脈の背景があります。大宅賞獲得へ向けて社を挙げたプロジェクトだったわけです。
他方、池田房雄氏は地に足のついた取材・執筆をされるジャーナリスト・ノンフィクションライターです。某は実際、一度もお目にかかったことはないのですが、某によるいきなりの電話取材に、多くのいろいろなことをお話し下さいました。その上、最後に「僕の話したことには事実だから、コメント確認は要りません(ファクスやメールでのゲラ確認不要)」と気にされないのにも頭が下がりました。政治家や官僚や言論人や経営者よりも過激な発言でしたが、何一つ矛盾もなく筋が通っていてそのまま活字にできました。そして裏付けも容易に取れました。
それから猪瀬と岩瀬は事実上の師弟関係だったことも教えてくれました。
恐らく猪瀬氏は岩瀬氏の師匠筋となるためと思われますが、某が(ベルダ記事の取材に関して)岩瀬氏に電話して、「池田氏の連絡先を教えて頂ければ…」と考えたところ、少々某には納得し難いやりとりがありました。夜眠れないような内容もありましたが、熟慮の結果、記事で全く触れないことに行きついた次第です。
実際、I氏のベルダ記事では岩瀬達哉の名前は「実は「ミカド」のデータマンは2人いた。『白い血液 エイズ上陸と日本の血液産業』などの著作があるジャーナリストの池田と、『年金大崩壊』などを著したジャーナリストの岩瀬達哉である。」と一ヵ所出てくるだけであり、岩瀬本人のコメントなどは一切載っていません。
僕(当ブログ管理人)が「『ミカドの肖像』の西武鉄道の取材をしていた岩瀬達哉は、池田房雄氏が猪瀬直樹に渡した草野洋氏らのネタ本と『現代の眼』の記事を、実際に読んで取材の参考にしていたのでしょうか。読んでいたならば、何故、そのことを追及されると、歯切れが悪いのか。」とメールで質問したところ、I氏は快く答えてくれました。
回答になるかどうかわかりませんが、一言で言いますと、「草野氏らの本等を参考にして取材に動いた。しかしそれは隠しておかないと大宅賞は取れなかったかもしれない。西武鉄道の話を発掘したのは我々だというしかない。猪瀬氏とはほぼ共犯だから隠さないとならない」というところではないかと推測しています。そこには次のような理由や背景があります。
細かいやりとりは省きますが、池田氏の連絡先を尋ねる電話を岩瀬氏へ掛けたときに、岩瀬氏は最初、本の存在を知らないと否定されました。しかし某と草野氏とのやりとり等を説明すると「読んだかもしれない」「西武鉄道関係の取材をしたのは俺だから。資料は段ボール箱で何箱にもなる」「どんな記事になるのか」「俺のコメントは載るのか」「今捏造ライターって呼ばれて裁判しているから、へんなコメントが出るとまずい」と変化していきました。少し尊敬していた方だったので正直言いましてガッカリさせられました。
その後、連絡先を入手して池田房雄氏へ話を聞くと、当時、週刊ポストの担当編集者らを交えた会議・打合せで、池田氏が「『ミカド』の連載に出典を明らかにしたほうがいい」と箴言じみた発言をしたところ、「そんな必要はない」と猪瀬氏や岩瀬氏は全く取り合わなかったそうです。当時の担当編集者であるN氏は、某の電話確認(取材とは言えない数分の会話)に対して、「どうして参考文献に載せなかったのかわからない」とネタ本の存在を認識していたことを認めていました。(この件に関しては、草野氏の事務所にいらしたI氏*1から、「草野氏が小学館へクレームの電話を入れたことがあった」との情報を得て当て取材を敢行したものです)
前にも書きましたが、「ミカド」で大宅賞を取ることは猪瀬直樹氏にとっても、小学館にとっても重要なミッションだったと思われます。
I氏曰く、大宅賞受賞のためにネタ本隠しを主導したのは小学館ではなく、実は猪瀬・岩瀬ラインであり、池田氏の苦言も黙殺していたという。当時、既に草野氏サイドから、小学館にクレームの電話があったという新事実も明かしてくれました。
また岩瀬は作家の黒川博行氏をグリコ・森永事件の真犯人と本気で考えていたそうです。
先の電話では、何とか「K」(池田氏の引っ越し先)というキーワードを拾うことができましたが、黒川博行氏を真犯人だと考えている風なことを本気で岩瀬氏が話されていたので驚かされました。フィクション的な紙面にして、読み物として面白くするように編集サイドから意向があったのかな――などと勝手に推測していましたが、そうではなくマジだったので、かなり衝撃を受けたわけです。
黒川氏を真犯人にでっち上げた、あのデタラメ記事も『週刊現代』編集部の意向というよりも、とどのつまり、岩瀬の独断と偏見と妄想の産物だったようです。こうなると、いよいよ岩瀬の過去の仕事にも眉に唾をつけるべきかと……。
尚、草野氏は既に鬼籍に入られているそうです。
話は変わりまして、草野氏はどうも亡くなられている可能性が高いです。朝堂院大覚(松浦良右)もそのようにブログに書いています。最後は、不動産会社「S」の社長・M氏の秘書をしていた「Yなる男が行方を知っている」という情報もありましたが、Yの所在がつかめませんでした。またご遺族にも連絡が取れないのが不思議です。(最後の住所・Hから後を追うことが難しい状況です)
因みに、草野氏と朝堂院大覚氏との関係も正確には「ジャーナリスト(取材者)」と「情報源(取材対象者)」だったらしいです。
朝堂院大覚(松浦良右)のブログでは、自らを大きく見せたいためか、草野洋氏のことを「弟子」と記述しています。が、年齢的にも草野氏の方が上ですし、ジャーナリストと情報源という立場が正しいはずです。取材者と取材対象者というわけです。
余談ながら、I氏は猪瀬について以下のようなエピソードも披露してくれました。
10年以上前の話をさせてください。「週刊ポスト」と「サピオ」の感謝の会(一般的な忘年会)の2次会で猪瀬氏と同席したことがあります。そこへ猿みたいな顔の飲み屋の女(恐らく同伴出勤)を連れて現れた猪瀬氏は、「今、江藤淳と話してきたんだけど、あの爺さん、モウロクしてて同じ話を何度も繰り返すんだよなあ」と自分より若い編集者やライターらを前に偉そうに話していて、イソップ物語でしたか、大きな牛を見て、子供蛙を前に息を吸い込んで腹を膨らませている親蛙を見ているような気がしました。
江藤淳も晩年はWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)なる無茶苦茶な陰謀史観に凝り固まるなど、大いに問題があった人物ですが……酒の席とはいえ、先輩ぶって文芸評論家の大家の陰口を叩くとか、改めて猪瀬の人間性を垣間見ることができます。
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*1:件のベルダ記事の執筆者I氏とは別人である。