KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

ピカレスクの肖像ー検証・猪瀬直樹『ミカドの肖像』盗用疑惑(その伍)

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 ・荒井香織氏が有料メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』の連載にて、元文藝春秋編集者で猪瀬直樹と旧知の仲の新井信氏へのインタビューを通し、延々と猪瀬擁護を展開しています。そのまま引用するには分量が多過ぎるので、その一部から。

■■猪瀬直樹批判に興じる出版社系週刊誌の品性■■

 新井 週刊誌は佐野さんについて表立って批判しなかったわけですが、都知事としての猪瀬さんの金銭トラブルについてはメチャクチャに叩きました。

 ――週刊誌の見出しを振り返ってみると、以下のようにボロクソです。
猪瀬直樹 姑息なウソを暴く!」(「週刊文春」2013年12月5日号)
「猪瀬都知事“血祭り”でほくそ笑む人々」(「週刊ポスト」2013年12月13日号)
「大特集 さようなら、猪瀬直樹。これで東京オリンピックも一安心」(「週刊現代」2014年1月4・11日号)

 この点について、新井さんは「週刊読書人」(2013年12月20日号)の「2013年回顧」で次のように綴っています。

 《都政を託された責任者として選挙民に納得のゆく説明をしなければならないのは当然である。だが、彼の過去の著作まで否定されるものではないだろう。かつて彼の作品を評価して賞を与え、雑誌の重要企画に起用してきたはずの編集者たちが、手の平を返したように口汚い人身攻撃に走るのを見るのは複雑な思いがする。著者と伴走してきたはずの編集者ならば、もっと違う形で過(あやま)ちを糺(ただ)す場を用意できなかったものだろうか。本人もノンフィクション第二世代をリードしてきた誇りがあるならば、作家に立ち返って読者に自らの筆で真相をはっきりと語る必要がある。》


 新井 あれだけ猪瀬さんの本を出版したり、雑誌に原稿を依頼してきた出版社が、口汚く攻撃しているわけです。猪瀬さんの作品は、佐野さんとは対極的な評論的手法によって描かれています。彼はすぐれた作品を書いてきたと思います。そのかつての著者に対して、手のひらを返したように「背が小さい」だの「威張り散らしている」だのと人身攻撃的に書き立てている。こういう姿勢は、編集者として野卑低劣です。

 もちろん徳洲会からの5,000万円受領問題については、東京都知事という公職にあった者としてきっちり説明する責任があります。それを真っ向から衝くだけならまだしも、金銭問題とは何の関係もない人格攻撃を出版社系週刊誌が執拗にやるのはどうなのか。

 佐野さんは「週刊ポスト」(2014年1月1・10日号)に「特別寄稿 猪瀬直樹君への手紙 かつての同志に綴る」という原稿を書きました。その中にこういう記述があります。

 《最近、旧知の編集者からこんな電話があった。
 「猪瀬直樹はもうおしまいだろうな。猪瀬に味方するやつはだれもいない。でも、それも自業自得だろう。ちょうど一年前、猪瀬は東京都知事になって、あなたに対する悪口をツイッターで書きまくっていた。バチがあたったんだよ」
(略)
 また猪瀬の元担当であり、散々煮え湯を飲まされたこともある別の編集者が言ったように「いい気味です。ザマー見ろですよ」とも思わなかった。》

 こういうことを佐野さんが書いてしまった。編集者がかつて自分が担当した作家について「バチがあたったんだよ」「ザマー見ろ」なんて言う。いかにその編集者のレベルが低いかということですよ。所詮、その編集者は猪瀬さんの原稿運びをしていただけの、ただのお使いさんだった。そのことを自ら告白しているようなものじゃないですか。

「荒井カオルの『だれが「ノンフィクション」を殺すのか』その20」『水道橋博士のメルマ旬報』vol.032-後篇 2014年2月25日号


 いや、猪瀬直樹が結果的に夜郎自大な「裸の王様」になっていたのは、元はと言えば、新井氏など取り巻きの編集者たちが長年に渡って耳の痛い苦言を呈してこなかったからでは。変に馴れ合わず、批判すべきことはきっちり批判するのが健全でしょう。新井氏も「売れればいいじゃん!」と猪瀬を甘やかし、付け上がらせた自身の責任を棚に上げて、この期に及んで擁護するなど見苦しい限りです。

 いずれにせよ、猪瀬はみんなの嫌われ者というか、敵が多過ぎたことが改めて浮き彫りになっています。主義主張以前に、まず人間性に問題がありまくりだからなあ。ある意味、同郷で長野高校後輩の日垣センセイにもそっくりですから。徳洲会スキャンダルでは、「お友達」も猪瀬を突き放して距離を置こうとしていた傾向が……。

 尚、新井氏は同メルマガの前号で、こんなエピソードも披露しています。

 猪瀬さんは『紙の中の黙示録』*1が問題になったころから、佐野さんの盗用について「山根一眞も佐野にテーマをパクられた」などと言ってデータを示し、僕に話をしてきたことがあります。

「荒井カオルの『だれが「ノンフィクション」を殺すのか』その19」『水道橋博士のメルマ旬報 vol.031-後篇 2014年2月10日号』

 
 猪瀬も代表作『ミカドの肖像』で、草野洋氏の『西武商法 悪の構図』(エール出版社、1983年3月)からテーマをパクっていたのですから、何をいわんかやです。


●月刊誌『現代の眼』の記事に載った草野洋氏のコメント

 会員制月刊誌『ベルダ』(2012年12月号)の告発記事「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』 参考文献リストにも載せず」の有料部分(雑誌本体)から。

 その『現代の眼』(休刊中)の八三年二月号に掲載された池田の八ページにわたる署名記事(堤義明/骨肉の争闘を制した二代目(「ピストル堤」野望の証明)には次の記述がある。

 《近く西武ものを書き下ろす草野洋は、(堤 筆者註)義明の唯我独尊ぶりを次のように語る。

 「(略)土地の大半は、国有地、元皇族や元家族の土地。ダマしたり、政治力で康次郎が手に入れたものです。赤坂プリンスは元梨王邸、高輪プリンスは元竹田宮北白川宮、麻布プリンスは旧藤田男爵邸、横浜プリンスは元東伏見宮別邸だったところです(攻略)」》

 二〇字詰め二五行のコメントの中で、草野は堤義明の人物像や西武鉄道が買収した土地について語っているが、出版直前にも関わらず気前よく核心部を披露している。

「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』 参考文献リストにも載せず」月刊誌『ベルダ』(2012年12月号)P49


 『現代の眼』の資料が手に入らなかったため、原典との比較照合は次回以降に先送りしますが、「猪瀬氏に草野氏の『悪の構図』を渡したのは事実です。『ミカド』の連載が始まる1年ほど前から取材や資料集めを始めたが、実は草野氏の本が出る直前に、僕は月刊誌『現代の眼』で西武鉄道のことを記事にしていて、そのとき草野氏からコメントをもらっていた。その記事のコピーと一緒に草野氏の本を猪瀬氏に渡しました」というデータマンの一人だった池田房雄氏の証言と照らし合わせても*2、猪瀬が草野本だけでなく、雑誌記事に載った草野氏本人のコメントも読み込んでいた事実が改めて分かります。

 引き続き「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』 参考文献リストにも載せず」の有料部分(雑誌本体)から。

 これは単なる参考文献への掲載忘れではない。謝罪もなければ、「後の版で参考文献リストに入れる」という訂正の対応もできたのにそれもない。

 猪瀬直樹事務所へ取材を申し入れたが、都知事選の準備が忙しいのか、締切日までに回答はなかった。無知を恥じた様子もなければ、すぐに露呈する浅はかな功名心でもなさそうだ。逃げの一手に「いったいどんな謎が秘められているのだろうか」(『ミカドの肖像』帯文より)。

「■猪瀬直樹にもあった「ネタ本隠し」の過去 大宅賞作品『ミカドの肖像』 参考文献リストにも載せず」月刊誌『ベルダ』(2012年12月号)P50


 徳洲会スキャンダルはともかく、そもそも盗用疑惑はマスコミ沙汰にはなりにくいです。日垣センセイの盗用事件もそうでした*3。猪瀬は池田氏にネタ本隠しを暴露されたとはいえ、この問題では現在に至るまで逃げの一手が結果的に成功している気がします。


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