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※2014/3/27追記:エントリーを更新しました。
・Amazonレビュアー【懸垂百回】さんが、『週刊新潮』(2014年3月20日号)の記事「饒舌な「通り魔」は「統合失調症」病歴で無罪になる!」に対し、これまた秀逸な検証レビュー「十年遅れの日垣隆の引き写し。「医療観察法」の存在も知らない大バカ雑誌」を書いていらっしゃいます。レビューでは『週刊新潮』発行元の新潮社だけでなく、件の記事に悪影響を与えている日垣センセイ、『そして殺人者は野に放たれる』、『少年リンチ殺人』も徹底的に批判されています。一読して、よくぞ言ってくれましたと、思わず膝を叩きたくなるだけの価値がありますので、お勧めします。
・余談ながら、【懸垂百回】さんは別件の検証レビュー「原田センセ,世間ではそれを「パクリ」と言うんですよ」でも、日垣センセイと唐沢俊一をパクリの代名詞として引き合いに出されています。こちらも興味深い内容です。
・徳洲会スキャンダルで失脚した猪瀬直樹ですが、いよいよ公職選挙法違反で立件されるとか。まあ、完全な自業自得でしょう。
http://www.asahi.com/articles/ASG3T33PDG3TUTIL002.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140325/k10013227891000.html
政治経験の浅い素人同然でありながら、同様に作家上がりの石原慎太郎には巧妙に取り入り、副都知事、都知事と大した苦労もなく頂点に上り詰めたことが、結果的に猪瀬の破滅を早めてしまったと言えます。無論、花田紀凱などお友達や取り巻きの編集者たちが、売れっ子ライターだからと必要以上に持て囃してきたのも要因でしょう。何度でも言いますが、文字通り「裸の王様」だったのですから。
いずれにせよ、今回の立件が実現すれば、猪瀬のライター復帰の芽も摘まれてしまう可能性があります。猪瀬本人も石原に接近して政治に関わらなければ、今頃は失墜した佐野眞一に代わってノンフィクション界の重鎮として在り続けたものを……と、臍をかんでいてもおかしくないです。権力欲と自己愛が人一倍強い猪瀬には、自重することができなかったのでしょうが。
・その猪瀬、脚本家の伴一彦氏をツイッターで誹謗中傷し、名誉棄損で訴えられていた裁判で、今月26日に東京地裁で和解が成立したとか。伴氏自身もツイートで報告しています。
http://www.asahi.com/articles/ASG3V56JPG3VUTIL02K.html
http://mainichi.jp/select/news/20140327k0000m040035000c.html
伴氏側によると、猪瀬が伴氏に100万円を支払った上で、謝罪のツイートをして来年の3月まで残すそうです。現時点(2014年3月27日23:37)では猪瀬のツイッターアカウントに該当するツイートは見当たらないものの、これは実質的に猪瀬の敗訴でしょう。猪瀬の代理人弁護士は「早期解決が適切であると考え、和解を成立させた」とのことですが、まさに弱り目に祟り目のダブルパンチ。あれだけ強気だった猪瀬もすっかり弱気になっているようです。
脚本家・伴一彦さんが猪瀬直樹都知事を訴えるまでの流れ - NAVER まとめ
猪瀬が伴氏とトラブルになったのも、元をただせば佐野の盗用を暴露する過程で、全く無関係だった伴氏の作品まで盗作呼ばわりしたことでした。結論ありきで、何でもかんでも十把一絡げにして叩く雑なやり方が裏目に出たと言えます。もっと細心の注意を払って、慎重にやるべきだったのでは。つくづくいい加減で、情けない醜態を晒しています。
本題。佐藤みどり*1氏から「一から十まで、ぜ〜んぶ、デタラメ!」と完全否定され、猪瀬からもここぞとばかりに批判された矢崎泰久氏の『口きかん わが心の菊池寛』(飛鳥新社、2003年4月22日第1刷発行)ですが、著者の矢崎氏は本文扉では以下のように説明していました。
●死人は口きかん。されど生きている者は本当のことをなかなか言わん。饒舌な人は往々にして自分に都合のいいことしか言わん。
●事実というものは必ず存在する。しかし、たしかな事実を見つけることは容易ではない。時には幾つもの事実を、好むと好まざるとにかかわらず人は背負わされ、迷路の中でたたずむしかない。
●この物語に登場する人物は、すべて実在している。歴史的な事実も踏襲している。しかし、あくまでも筆者によるフィクションであることをお断りしておきたい。
矢崎泰久『口きかん わが心の菊池寛』(飛鳥新社、2003年4月22日第1刷発行)本文扉
また、巻末の「あとがき」でも次のように述べています。
この本の執筆を私が思いついたのは、八年ほど前だった。三十年間作り続けた『話の特集』を廃刊して時間ができたので、菊池先生のことだけは書いておきたかった。『話の特集』には初期の『文藝春秋』に似たところがあるという指摘を多くの人から受けていたこともあって、自分に引きつけて書く決心をしたのだった。しかし膨大な資料を読むうちに、いろいろな矛盾点なども出てきて筆が進まなくなった。最終的には、物集高量と叔母と私の両親から聞いた話を事実と受けとめ重視することで解決した。
矢崎泰久『口きかん わが心の菊池寛』(飛鳥新社、2003年4月22日第1刷発行)P265
その上で、矢崎氏は「参考文献」(P266)で佐藤みどり『人間・菊池寛』もリストアップし、「以上の著書を参考にさせていただきました。謹んでお礼申し上げます。」と敬意を表しています。ここまでやっているのであれば、少なくとも儀礼的には問題ないでしょう。一応、読者への説明責任も果たしていると言えます。
そもそも、矢崎氏は猪瀬及び『こころの王国』を「剽窃であり、盗作とも言える。」と批判している手前、自著の『口きかん』は独創性というか、違いを強調するためにも敢えてフィクション(創作)を交えている可能性もあります。
佐藤氏の酷評はさておき、猪瀬がそれに便乗して矢崎氏を攻撃したのは筋悪でしょう。底意地が悪い男というか……。
★参考資料
こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生 - Wikipedia
http://www.inose.gr.jp/news/post1022/
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008070701000324.html
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*1:佐藤碧子(さとう・みどり、さとう・みどりこ)とも表記する。本稿では便宜上、「佐藤みどり」で統一する。→ 佐藤碧子 - Wikipedia