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・当ブログへの御意見・御感想は、下記のメールアドレスまで御連絡下さい。日垣センセイの学生時代など、情報提供もお待ちしております。情報源の秘密は厳守します。また、貴重な情報をお知らせいただいた方には、謝礼も検討していますので、宜しくお願いします。
kafkaesque1924@gmail.com
・No such wiki - ShoutWiki Hubの新しいバージョンが開設されています。前のサイトがいつの間にか閉鎖されたのは、どういう事情があったのでしょうか。岡田斗司夫サイドから弁護士などを通じて正式に抗議があったとか……?
前回のエントリーでは、評論家の栗原裕一郎氏の日垣センセイ崇拝の恥ずべき過去を検証しました。今回は生前、作家としてロシア語同時通訳としても売れっ子だった米原万里氏を再び取り上げます。
米原氏も栗原氏同様に、日垣センセイの稀代のペテン本『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)を絶賛していたことは、当ブログでも既に検証済みです。
WOLF'S DEMAー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』の評判 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
実はAmazonレビュアー【懸垂百回】さんもコメントで指摘していますが、米原氏は遺作『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年10月15日第1刷)の所々で日垣センセイを持ち上げているのです。
戦後最初の観光客としてイラクを訪れた日垣隆は、「病院には幾つもの死がありましたし、破壊の跡には絶望がありました。しかし、それ以上に笑い声があり、笑顔があり、ジャーナリストでも兵士でもないアジア人への親しみがありました」「日本から中途半端な軍隊として自衛隊を一千人送り込むより、一千人の観光客と一千人の大工がイラクを訪れたほうが数段、その復興支援と両国の良好な関係に資する」と述べている。
(中略)
以上いずれも日本ペンクラブが緊急出版した『それでも私は戦争に反対します。』(平凡社)に収められている。四五人の文学者やジャーナリストによる創作、エッセイ、詩、手紙、批評などから成るアンソロジー。二〇〇三年暮れに出版が決まり、一月中旬の締め切りを何と全員が守るという奇跡を起こした名オーガナイザー吉岡忍が書き手たちを口説いた文句がそのまま前書きになった。
P210〜211
日垣隆著『売文生活』(ちくま新書)は、収入という切り口から、明治期から平成期までの物書きたちの言説と現実を見ていく。すると、彼らの本音と建て前(原文ママ)がモロ見えてきて、普通の文学史や伝記などでは見えてこない人間くさい姿が立ち現れるのだ。
とにかく引用がいちいち面白い。関川夏央と山口文憲のクレジットカード作りをめぐる対談など、何度読んでも爆笑する。
日本文藝家協会に加盟する三〇〇〇名の会員の内、原稿料と印税だけで生活できる小説家は全体の五%程度。純文学に限定すると一〇人に満たない、という島田雅彦の発言に対して、金井美恵子が「『お金』については語らない」という文章で、「それだけの収入で『貧乏』に生活する小説家もいるでしょう。私もその一人です。」と異議を挟んだ件について、日垣は、『お金』や『貧乏』をカギカッコをつけて語る金井の、「胸中ではお金に執着しているのに、涼しい顔をしてみせる」「いやらしい」偽善を突き、「端的に言えば、大勢の読者のために書かれる娯楽小説とは異なって、純文学は自分と『わかってほしい読者だけ』のために書いているのでしょうから、勝手に回路を閉ざしておいて貧乏だの食えないだのと自虐的に自慢するのは、やめていただきたい」と釘を刺す。
たしかに、「お金の話を身内でするのが大好きなのに、編集者の前では交渉すらできない作家が多い。必要以上にお金のことを誇大に考えているからだ」ろう。耳が痛い。
一つだけ残念なのは、日本ペンクラブ二〇〇〇名の会員の内、会費を納めているのは一〇〇〇名未満と記している件。同団体の理事を四年間務めてきた私としては、最悪の時でも八〇%、最近は九〇%以上の納入率が続いていることを知っている。事務局に尋ねたら、日垣から電話での問い合わせさえ無かったとのこと。辛口の割に取材の詰めは甘いようだ。
P258〜259
参院で否決された法案を衆院に差し戻さずに解散権を行使した小泉首相の強引な手法は、あたかも自ら退路を断った潔さのように受け取られて、各社世論調査で支持率が急上昇した。
(中略)
「自らの政治生命をわずかでも延期するためには、衆院の解散しか選択肢はなかった」とメールマガジン『ガッキィファイター』で指摘するのは、日垣隆。
いかにも『世間のウソ』(新潮新書)の著者らしく、選挙絡みのウソを鮮やかに突く。選挙の争点に郵政民営化を据えているが、「郵政民営化法案は継続審議になったのではなく、憲法第五九条の定めるところによって、正式に廃案になった」「いったん廃案になった条文を部分的に修正しても、再び国会に上程することは明らかに憲法違反」であると。また、民営化至上主義については、一〇兆円の国民負担で不良債権を整理した長銀を外資にわずか一〇億円で売って差し上げた実績を持つ小泉・竹中の外資大好き売国奴コンビが、郵貯簡保の莫大な国民資産を長銀と同じ運命に晒していると。
P277〜278
「諸君!」(二〇〇二年)六月号で日垣隆が朝日新聞の看板コラム「天声人語」をコケにした「『神話』の崩壊」が的確で皮肉で大いに笑わせてもらった。その中で展開されるコラム論「小さな事件でも、触れる以上は現場に必ず行っておく。……それが時事コラムを書く者の最低限のモラル」「他のメディアが触れない本質的な断面をわかりやすく書く」「コラムの要請は、オリジナリティと意外性にある」は、なるほどと感心することばかりで、早速ご本人のコラム集『敢闘言』を読んだ。「さらば偽善者たち」という副題どおりに現代日本のメディアや世論や言論人が振りまくもっともらしい言説の虚偽を剥ぐぶっきらぼうなほど飾らない文章は新鮮である。率直で血を吐くように激烈な言葉がナイフのよう。では、「自分が直接見聞したことを素材として(虫の眼)、社会的視野で同時代を洞察してゆく(鳥の眼)」という著者の心意気や、先のコラム論がここに結実しているかというと、あくまでも努力目標、その方向で自らを叱咤するために書いたのだろうと思われる。
自分のことは棚に上げなくては、面白い批評は書けないのだ。そうやって、次は他者に批判してもらうのも覚悟で、自由闊達に書いているのがいい。ただし、これが雑誌の中の一文であったときは、激辛調味料としてよかったかも知れないが、一冊の本になると、一気に全部読むのは苦しい。
せいぜい一日五編が限度かな。
P442〜443
米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年10月15日第1刷)P210〜211、P258〜259、P277〜278、P442〜443
米原氏が日垣センセイの熱烈な信奉者であったことは分かっていましたが、有料メルマガ「ガッキィファイター」の愛読者だったことまでは知りませんでした。それにしても、『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第1刷発行)にある日本ペンクラブの会費未納問題の件で、「一つだけ残念なのは、日本ペンクラブ二〇〇〇名の会員の内、会費を納めているのは一〇〇〇名未満と記している件。同団体の理事を四年間務めてきた私としては、最悪の時でも八〇%、最近は九〇%以上の納入率が続いていることを知っている。事務局に尋ねたら、日垣から電話での問い合わせさえ無かったとのこと。辛口の割に取材の詰めは甘いようだ。」と、日垣センセイの詐術に当事者として気が付いていたのならば、何故、その時点で過去の仕事まで遡って疑わなかったのか。米原氏も迂闊で軽率というか、メディアリテラシーが著しく欠落していたのが一目瞭然です。後藤和智氏と同様に、『世間のウソ』(新潮新書、2005年1月20日発行/2006年3月10日11刷)を無反省に評価しているところも……。『敢闘言』シリーズでの日垣センセイの弟さんの死の記述の変遷ぶりにも気が付いていたかは全く不透明です。
ぼくの無知を救ってくれなかったガセ本へー日垣隆『世間のウソ』検証編 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
[日垣隆「弟の死」]記事一覧 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
死者に鞭打つ意図は毛頭ありませんが、米原氏は『打ちのめされるようなすごい本』の他の個所でも、柴田哲孝『下山事件 最後の証言』(祥伝社)を鵜呑みにして称賛しているなど*1、「うわあ……」と思わず天を仰ぎたくなる記述が多々あります。何よりもあの近藤誠医師の近藤理論を真に受けて、手術などの現代医療による治療を殆ど拒否し、手遅れになって死んでゆく過程が克明に書かれた闘病記になっているのが……*2。尚、下山事件の柴田本のノンフィクションとしての致命的な欠陥については、「事件関係ブログ」さんが下記のエントリーにて検証しています。
2005年には杉浦日向子先生が若くして亡くなられ、翌年には米原万里先生が……本当にショックでした。お二人とも、がんでした。しかも、米原先生は近藤誠医師に頼ってしまい、「様子見」を勧められて手術せずに悪化。その後は近藤医師に冷たく突き放されたことが、エッセイに書かれてますよ。
— 森奈津子@「桃色巡礼者ミソノ」連載中 (@MORI_Natsuko) 2015, 7月 23
米原万里さんは、『もしも自分が複数いたら様々な治療法を試せるのに』とエッセイに書かれていたのですが、この世にたったひとつのかけがえのない身体を近藤誠医師に委ねてしまったとは残念です。@MORI_Natsuko
— 20miglia (@20miglia) 2015, 7月 23
@20miglia そうですね。もし、米原万里先生が近藤誠医師を頼らなかったら、まだ、ご存命だったかもしれない……というのは、たびたび考えてしまいます。
— 森奈津子@「桃色巡礼者ミソノ」連載中 (@MORI_Natsuko) 2015, 7月 23
@MORI_Natsuko おはようございます。
恐れ入ります、米原さんが近藤医師に突き放された旨が書かれたエッセイはどの本に収録されているか、教えていただけますか?
読むのは辛いですが見てみたくて。
— 20miglia (@20miglia) 2015, 7月 24
@20miglia 『打ちのめされるようなすごい本 』です。ぜひ読んでみてください。近藤医師に対して恨みがましいことはあまり書いていない点が、かえって胸に迫ります。
— 森奈津子@「桃色巡礼者ミソノ」連載中 (@MORI_Natsuko) 2015, 7月 24
余談ながら、日垣センセイも近藤誠医師を高く評価し、共著『死の準備』(洋泉社、2001年7月21日初版発行)を出したり、自らがホスト役を務めたラジオ番組『サイエンス・サイトーク』のゲストに招いて対談しています*3。後付けで恐縮ですが、米原氏の場合、リテラシー能力の欠如は文化人として世論をミスリードするだけでなく、本人に死神まで呼び起こすという反面教師になっているのが実状でしょう。他山の石とすべき教訓です。
★参考資料
患者の〝生きる力〟を蝕む近藤誠医師の「がん放置療法」 | WEB第三文明
福来さんのお父さんの話-「近藤誠」「末期ガン」 - Togetter
近藤誠氏 ついに癌だけでなく医療否定に|医療維新 - m3.comの医療コラム
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*1:米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年10月15日第1刷)P278〜279
*2:米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年10月15日第1刷)だけでも、近藤誠の名前が肯定的な文脈で、P193、194、304〜307、502に出てくる。
*3:TBSラジオ『サイエンス・サイトーク』(2002年12月8日、12月15日放送分)→日垣問題の記録 ~ 日垣隆 研究報告 ~: サイエンス・サイトーク 放送内容リスト