KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

WOLF'S DEMAー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』の評判

・初めてこのエントリーを読まれる方は「日垣問題の記録」「日垣隆(Wikipedia)」「ガッキィスレまとめサイト@ウィキ」のご一読をおススメします。
日垣隆の弟さんの死因に関して、その真相をご存知の方からの情報提供をお待ちしています。下記のメールアドレスまでご連絡下さい。
kafkaesque1924@gmail.com



・日垣センセイ、相変わらず語学留学先だったフィリピンの学校に対して、罵倒を繰り返しています*1 *2。これ以上、海外において日本人の評判まで落としかねない愚行を続けるのは……。


●第3回新潮ドキュメント賞の選評

日垣センセイの代表作『そして殺人者は野に放たれる』については、当ブログにて検証してきました*3。その第1回目である赤頭巾ちゃん、オオカミ中年に気をつけてー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(その壱)において、ノンフィクション作家の高山文彦及びアルファブロガー兼多読家の小飼弾の両氏が本書*4を絶賛していることに触れました。今回は、単行本が2004年度の第3回新潮ドキュメント賞を受賞した際の選評に加え、他メディアに載った書評をいくつか紹介します。

まずは、当時の選考委員の一人である数学者・エッセイストの藤原正彦氏の選評から。

「そして殺人者は野に放たれる」は心神喪失とか心神耗弱なる精神鑑定により、多くの殺人者が無罪や微罪とされている現状を糾弾したものである。豊富な資料調査により、精神鑑定医のいい加減さ、裁判官の思考停止、人権ばかりを言いつのるメディアの偽善、を鋭くつく。精神障害者が殺人を犯した場合、ほとんど常に不起訴か無罪となるのは周知だが、著者は「厳罰に処せ」と主張する。放免することは被害者とその家族の人権の無視であるうえ、「精神障害者は罪を犯すものだ」という差別につながると言う。厳罰を耳にしたのは初めてで、著者の勇気に感銘を受けた。

「第三回新潮ドキュメント賞ー選評」(『新潮45』、2004年10月号)P107


同じく、ノンフィクション作家の柳田邦男氏の選評。

『そして殺人者は……』は、いわば大テーマを追ったものだ。精神障害者や薬物中毒者や一時的な心神耗弱者の安易な情状酌量や再犯放置の問題は組織マスコミではタブー視されている。日垣氏はそこに独り切り込み、驚くべき実態を数々の事例を調べあげてさらけ出す。大テーマだが、誰しもがぞっとする切迫感を抱かせられるのは、すべて自分の命にかかわる身近な小状況でもあるからだ。タブーを破る勇気ある仕事が評価された。

「第三回新潮ドキュメント賞ー選評」(『新潮45』、2004年10月号)P108


同じく、作家・写真家の藤原新也氏の選評。

日垣隆さんの「そして殺人者は野に放たれる」は読んでいて逆に喜びは消え、どんどん奈落の底に落ちて行く。この社会における殺人事件の加害者側と被害者側の扱いのあまりにも理不尽な現実をこれでもかこれでもかと突きつけられるからである。辛い書き物である。

この「辛さ」というものを引き受け、書き続けるということは時に「喜び」を書く以上のねばりと膂力を必要とする。

貴重な一冊である。

「第三回新潮ドキュメント賞ー選評」(『新潮45』、2004年10月号)P108


同じく、ジャーナリストの櫻井よしこ氏の選評。

日垣隆氏の『そして殺人者は野に放たれる』は、なによりもテーマの設定が秀れていた。加害者を調べてみると、実は、加害者自身が保護されるべき立場にあり、罪に問うことも、実名で報道することも許されないケースがふえているのは本書の指摘どおりだ。最も理不尽なのは、被害者はいかに傷つけられ、或いは命を奪われたのかについて、被害者やその家族は殆ど情報を得られないことだ。加害者と被害者の立場が逆転したかのような、冷たく被害者を疎外する取り調べによって、彼らは二度、深く、傷つけられる。

メディアはこの種の事件の報道に非常に憶病であり続けた。報道され始めたのは、つい、この二〜三年である。そのような状況の中で、著者はひとつひとつの事件を、ずっと以前から、丁寧に取材し、加害者をも実名で報じてきた。タブー視された分野に挑んできた先駆者としての意義は深く、書き手としての決意に敬意を表するものだ。

「第三回新潮ドキュメント賞ー選評」(『新潮45』、2004年10月号)P109


最後に作家の柳美里氏の選評。

『そして殺人者は野に放たれる』。数頁読んで、正面からの殺気を感じた。刃物を両手に握りしめ、切っ先は一ミリのぶれもなく相手の心臓を狙っている。その相手というのは、刑法三九条によって手厚く保護された殺人者のみならず、「心神耗弱」「心神喪失」を乱発する精神鑑定医、抜け穴だらけの刑法三九条、殺人者を抜け穴に導く弁護士、裁くことに弱腰で刑法三九条の拡大適用に目をつむりつづけている裁判官、そして、殺人者を匿名で報じるテレビや新聞によって事件に接し、「やっぱり頭がイカレタ奴だったんだ」と、なんの疑いも抱かずに飯を食いつづける私たちなのである。

〈あとがき〉の「私の弟は理不尽に殺され、兄は長く精神分裂病*5に罹患したままです。(中略)二つの事実を、私の中で何とか統一できたらと願いながら長い調査と取材を続けてきました」という箇所を読んで、欲深で非情な読者である私は、自身の「統一」は打ち棄て、「着地」を目指すことなく、手に握りしめた刃物の光だけを頼りに、自身の「闇」にさらに分け入ってほしい、日垣隆氏には、その動機と勇気と覚悟があるのだから、と思った。
P109〜110

日垣隆氏の〈闇〉、山本譲司*6氏の〈揺れ〉ー、〈闇〉の中で〈揺れ〉ている多くの人に、是非この二作*7を読んで欲しい。
P110

「第三回新潮ドキュメント賞ー選評」(『新潮45』、2004年10月号)P109〜110


「著者の勇気に感銘を受けた。」(藤原正彦)、「タブーを破る勇気ある仕事が評価された。」(柳田邦男)、「貴重な一冊である。」(藤原新也)、「タブー視された分野に挑んできた先駆者としての意義は深く、書き手としての決意に敬意を表するものだ。」(櫻井よしこ)、「是非〜読んで欲しい。」(柳美里)……。後知恵で恐縮ですが、今読み返してみると、ツッコミどころ満載で、皮肉な笑いを抑えきれません。この人達には、およそメディアリテラシーが無いのか。仮にもプロの書き手ならば、原典に当たってチェックしてみるとか、その分野の専門書を繙いて調べてみるとか、何故やらないのでしょうか。何の検証もないままP&G(パクリ&ガセ)満載の本書に賞を出して、お墨付きを与え、世に送り出したのは、まさに日本のジャーナリズム史上の汚点であり、新潮ドキュメント賞の存在意義を根底から揺るがす不祥事だったのに……。無論、同賞の主催者の新潮文芸振興会、版元の新潮社の責任は重大です。少なくとも、校閲が杜撰すぎます。ほぼノーチェックだったのでは。元祖P&Gの誰かさんも仰天でしょう。

特に柳美里氏は、本書における日垣センセイの弟さんの死の記述についても、何の疑問も抱かずに鵜呑みにしているとは、御愁傷様です。


宮崎哲弥米原万里もまた……

上記の第3回新潮ドキュメント賞の選考委員五人組だけではありません。他にも本書を無反省に持ち上げている文化人がいます。

例えば、評論家の宮崎哲弥氏は『週刊文春』の連載「新世紀教養講座」「ミヤザキ学習帳」(2001年1月18日〜2006年8月10日号)をまとめた自著『1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド』(新潮社、2006年11月15日発行)のP147にて、以下のように絶賛しています。

日垣隆(A)『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)は、心神喪失心神耗弱による刑事責任の減免を定めた刑法三九条をめぐる現状を激烈に批判する力作。正直な精神鑑定医ならば「結局わからない」と本音を漏らすという。私も刑法三九条削除論をずっと唱えてきた。最近の論考は(B)「刑法から三九条を削除せよ!」(『わしズム』vol.7』所収 幻冬舎)である。

しかし、私の削除論は飽くまで理論的なもので、日垣のように実例を詳しく調べたわけではない。想像よりも遥かに酷い実態を本書によって知らされた。

宮崎哲弥『1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド』(新潮社、2006年11月15日発行)P147「ミヤザキ学習帳第6回」から。
※初出・宮崎哲弥「ミヤザキ学習帳第6回」(『週刊文春』2004年2月19日号)


また、作家の米原万里氏も、死後、出版された遺作の中で、本書を下記のように絶賛しています。

《今年の三冊》

日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)
亀山郁夫ドストエフスキー 父殺しの文学』(NHKブックス
アンドレイ・クルコフ[沼野恭子訳]『ペンギンの憂鬱』(新潮社)

①は、凶悪犯が「心神喪失」なる口実で無罪放免される刑法の犯罪的欠陥、それを運用し続ける司法関係者の思考停止、被害者の哀しみ、怒り、悔しさを冷静に論理化体系化した感動の一冊。

米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年10月15日第1刷)P503〜504
※初出・『読売新聞』(2004年12月26日)

多読家兼書評家としても、文壇及びジャーナリズムから定評があった宮崎・米原両氏ですが……やはりプロの書き手とは思えない凡ミスです。前者の宮崎哲弥氏に至っては、日垣センセイが判決文を捏造して引用していた『裁判官に気をつけろ!』を大絶賛していた前科もあります*8。つくづく、迂闊で軽率なダメ評論家です。

本書は、多くの文化人・ジャーナリストに読まれながら、殆ど誰も日垣センセイのP&G(パクリ&ガセ)を見抜けませんでした。ある意味、読み手のメディアリテラシーを判断するリトマス試験紙になっているのが本書です。過去に本書を無反省に賛美していた文化人・ジャーナリストなどは、とりあえず、そのリテラシー能力を疑ってかかるべきでしょう。


★参考資料

第3回新潮ドキュメント賞

新潮ドキュメント賞 - Wikipedia

そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)

そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)

裁判官に気をつけろ! (文春文庫)

裁判官に気をつけろ! (文春文庫)

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