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●自称「ジャーナリスト」岩瀬達哉の正体
ベストセラー『ドキュメント パナソニック人事抗争史』(講談社、2015年4月)などで、未だに一部のマスコミから引っ張りだこの自称・ジャーナリストの岩瀬達哉。
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ジャーナリスト岩瀬達哉氏が語る「漏れた年金」問題の深層|日刊ゲンダイDIGITAL
『パナソニック人事抗争史』岩瀬達哉著 | プレジデントオンライン
しかし、当ブログでも度々取り上げて指摘してきましたが、岩瀬は『週刊現代』(講談社、2010年12月18日号〜2011年10月15日号)での合計20回に及ぶ連載記事「かい人21面相は生きている グリコ森永事件27年目の真相」にて、作家の黒川博行*1氏をグリコ・森永事件の犯人にデッチ上げ、黒川氏から名誉棄損、プライバシー権の侵害等で提訴され、版元の講談社と共に全面敗訴しています。岩瀬が曰くつきのライターであることは、あまり問題視されていないというか、意外に知られていないのが実状です。
今回は特別篇というか、番外篇も兼ねて、『週刊文春』(文藝春秋、2011年10月27日号)にて黒川氏が岩瀬のデタラメぶりを告発した手記の第1弾を紹介していきます。
ミステリー作家 黒川博行「怒りの独占手記」
週刊現代デッチ上げで「かい人21面相(グリコ・森永事件)」にされた私
ダマシ討ち取材、妹一家への中傷、悪質な捏造は許せない
事件について推理を披露していたら、記事では「かい人21面相」に擬せられていたー。仮名とはいえ犯人と断定された黒川氏は怒りを隠さない。疑う根拠には致命的な事実誤認もあり、講談社に抗議したが誠意ある回答はない。憤る作家は決意を示すべく筆を執った。「週刊現代」の連載記事を読み終えて、「これオレのことや!」と腸が煮えくり返るような思いを覚えました。まさか、自分がグリコ森永事件の「かい人21面相」にデッチ上げられるとは夢にも思いませんでした。
著者であるジャーナリストの岩瀬達哉氏と担当編集者が、昨年末から今年九月にかけて合計三回、大阪の自宅へ取材にきましたが、私はミステリー作家として、グリ森事件の犯人像について推測してみせただけ。それなのに、記事ではあたかも私が“真犯人”で、当時を振り返りながら語っているかのように仕立てられていました。
また、連載の中で私を犯人と疑う根拠がいくつか提示されていますが、その多くは事実誤認であり、私の家族や親族を中傷するような内容も含まれています。噂話の類なら笑い話で済むかもしれませんが、記事で真犯人と断定された以上、同じ活字を生業としているものとして、到底、看過するわけにはいきません。
講談社に連絡し、「週刊現代」の鈴木章一編集長と上司の出樋一親第一編集局長らに抗議しましたが、平謝りするだけで、十七日現在、誠意ある回答を得られていません。
「週刊現代」の“巨弾連載”「かい人21面相は生きている グリコ森永事件27年目の真相」(昨年十二月十八日号〜今年十月十五日号)で真犯人にされたのは、ミステリー作家の黒川博行氏(62)だ。氏は、関西を舞台にした作品を発表し、サントリーミステリー大賞や日本推理作家協会賞を受賞するなど、根強い人気を誇っている。
「週刊現代」の連載では、最終二回に「浜口啓之(仮名)」として黒川氏が登場している。一九八四年三月から「終結宣言」が出た翌年八月まで続いた世紀の未解決事件の“真相”を追った最終回のタイトルは、「スクープ直撃! あなたが『21面相』だ」とセンセーショナルなものだった。
「うまく辻褄が合うんです」
三回の取材の中で、私は一度も「黒川さんが真犯人ではないのか?」と訊かれていません。仮名にして配慮したつもりになっているのかもしれないが、連載を通して読めば、私のことだとわかる人もいるでしょう。実際、ある新聞の大阪の編集部で噂になり、記者から「これは黒川さんのことですか」と問い合わせを受けました。しかも仮名の「啓之」は、ヒロユキと読めば、私の博行であり、ケイスケと読めば、『疫病神』など私の一連の作品の主人公「二宮啓之」になります。
そもそも連載六回目で私の実名が書かれています。サントリーミステリー大賞で佳作になったデビュー作、『二度のお別れ』は、事件当時、脅迫状の文面や身代金の受け渡し方法などが酷似しているとマスコミに騒がれました。そのあと兵庫県警の警部補と茨木署の刑事が、当時私の勤めていた高校に事情を聴きに来たこともあったのです。
岩瀬氏は最初、「二十七年前にグリ森事件で騒がれた作家」として、話を聞きたいといって取材に来ましたが、いま思えばそのころから彼らの魂胆は別のところにあったのかもしれない。
その後の取材も同じようなつもりで受けていたのですが、最後の取材で岩瀬氏は「今度の記事を読まれると、不快な思いをされるかもしれません」と何度も言っていました。
こんなやりとりもありました。
「黒川さんを真犯人として書けば、うまく辻褄が合うんですよね」
「それをやったら、実名を出したほうが面白いですよ」半分シャレで、そう言ったら、岩瀬氏は「黒川さんへの“やっかみ”が出ますから」と不思議なことを言っていた。
連載終了後、担当編集者にきくと、事件で大金をせしめているだろうから、私が周囲から妬まれるという意味だったというのです。
「ほんまに犯人と思い込んでるんやな」とホトホト呆れました。
「ミステリー作家 黒川博行「怒りの独占手記」週刊現代デッチ上げで「かい人21面相(グリコ・森永事件)」にされた私」『週刊文春』(文藝春秋、2011年10月27日号)P38〜39
黒川氏は岩瀬から一方的にかけられた「グリコ・森永事件の真犯人」の濡れ衣を繰り返し完全否定しつつ、この手記を発表するに至った経緯を語っています。
続いて、黒川氏は岩瀬の捏造記事の間違いを具体的に指摘し、論証していきました。
飼い犬と妹の息子を勘違い
連載で黒川氏を真犯人だと疑う根拠として「週刊現代」で指摘されているのは、主に五点だ。
1.警察が公表した「キツネ目の男」の身長と年齢に符号する。
2.犯行に使用された「赤いニッサン・パルサー」の姉妹車に乗っていた。
3.妻の妹の嫁ぎ先がメッキ工場で、当時も今も容易に青酸ソーダを入手できる。
4.脅迫テープに言語障害を持つ子供の声が録音されており、黒川氏の妹の息子にも言語障害がある。
5.犯行現場の北摂地域に土地勘があり、かつ、犯行現場近くのダイエーで働いていたことがある。このうち少なくとも三つは事実誤認です。連載最終回の冒頭近くには、こうあります。
「自宅の裏庭の車庫に車を停めるや、運転していた女性は、勝手口から家の中へ駆け込み、こう声をあげた。
『イッちゃん、イッちゃん……』
呼びかけに応えるうれしそうな声が裏庭に漏れてきた。それは、家でひとり留守番をしていたこの女性の息子で、言語障害のある男性の、言葉にならない野太いうめき声であった。
この障害児の母親は、(略)かい人21面相との接点が疑われる浜口啓之(仮名)の実の妹である。(略)かい人21面相のメンバーの中には、障害児を生み育てている夫婦、もしくはその夫婦と近しい関係にある者が含まれていたからだ」
しかし妹の息子に言語障害などありません。彼は現在三十代で、芸大を卒業し、家具デザイナーとして働いています。帰宅した妹の呼びかけに唸り声で応えたのは、おそらくジャックラッセルテリアの「ぺぺ」という飼い犬でしょう。妹は普段「ぺーちゃん」と呼んでいます。
岩瀬氏と担当編集者は奈良の妹宅の敷地内に不法侵入して裏の勝手口を見張り、妹の呼びかけを聞いた(これはふたりが認めました)のですが、岩瀬氏は「あれはキーちゃんですよね」と私に言い、担当編集者は「チーちゃんと聞きました」と言いました。妹の呼びかけに応じた犬の鳴き声を“野太いうめき声”と勘違いしたのは、私が21面相だと思い込んでいた妄想の結果でしょう。また、妹は事件当時、公立中学教諭であり、その夫も中学教諭で、のち校長になりました。
あまりにも馬鹿馬鹿しくて信じられないかもしれませんが、それが彼らの取材の実態なのです。妹の息子に言語障害があるか、妹夫婦も私も「週刊現代」から確認されていません。
十月八日号では浜口こと、私の生い立ちを、こう紹介しています。
「浜口は、小学校入学から高校卒業まで、大阪港に面した工業地帯で育った。大阪市内のなかでも、とりわけ中小零細の事業者が密集するこの地域は、同和地区、在日韓国・朝鮮人地区などが複雑に入り組み、低所得者が集う地域として知られていた。
浜口の実家は、戦後、地元のヤクザが焼け跡に不法占拠した土地を、勝手に分譲してできた街の一角にある」
当時はメッキ工場ではない
私が育った街は、同和地区、在日韓国・朝鮮人地区のいずれにもあてはまりません。とりわけ関西ではデリケートにならざるをえない問題を、きちんと確認もとらずに、軽々しく書く神経が信じられない。ヤクザが不法占拠した街だったと聞いたこともない。何を根拠にこういった事を書いているのか、明らかにするべきです。
私が極貧の家庭に育ち、カネに執着する人物だという印象を読者に植え付けたかったのでしょう。私の父親は、瀬戸内海を行き来する五百トンの内航タンカーの船主船長でした。周りがどう見ていたかはわかりませんが、比較的、裕福な家庭で育ったと思っていますし、食うに困ったという経験もありません。
事件当時、三十五歳でしたし、身長は百八十センチ弱です。確かに、警察が発表した「キツネ目の男」の身長(百七十五〜百七十八センチ)や、年齢(三十五歳〜四十五歳)に当てはまりますが、この条件に合う男性は探せばいくらでもいるでしょう。
赤いパルサーの姉妹車に乗っていたのは事実です。しかし、私の車は「パルサー EXA」という角張ったスポーツカータイプ。警察が犯行車両と断定した二ドアのハッチバック式は丸みを帯びていて、明らかに形が違うのです。岩瀬氏は「遠目にはパルサーと見間違える車」と書いていますが、間違えようがない。
メッキ工場は、たしかに親族が経営しています。ただ、妻の妹が嫁いでいるというのは間違いで、私の母方の従兄弟が経営しています。それに事件当時はプレス工場でメッキはしていません。
また、「その気になれば、いくらでも青酸ソーダを入手できた」と書いていますが、現在、従兄弟の工場では、劇薬物はすべて鍵のかかった収納庫で管理されています。彼らに言わせれば、親族たちも犯行グループの一味と信じているのかもしれませんが……。
そして、犯行現場に土地勘があるという点ですが、以前、箕面市、茨木市に住んでいたことがあるので、もちろん何度か通ったこともあります。ただ、他の犯行現場である滋賀などについては、全く土地勘はありません。
岩瀬氏は、ダイエーに勤務していたころの私が、犯行現場の近くに立ち寄ったことがあると書いています。しかし、本社の建築意匠課勤めだった私は、関西一円ほとんどの店舗に出張しています。岩瀬氏から「〇〇支店を知ってますか」と聞かれて、「知ってる」と答えただけで、事件現場に土地勘があると思い込んでしまったようです。
全てがこんな調子です。先に説明したように、事件発生の約半年後に出版されたデビュー作がグリ森事件と関連付けられ、ずいぶんとマスコミに注目されました。
「かい人21面相」によるグリ森事件は、この作品の出版後もしばらく続いています。当時、マスコミから騒ぎ立てられていた私が、どうやって犯行を続けられるというのか。
確かにこの事件では、数多くの捜査ミスが指摘されています。しかし、もし犯人が私だったとしたら、時効まで逃げられるわけがない。そこまで警察も無能ではないでしょう。
また、連載記事でひどいのは、取材の前提と裏付けを読者に一切伝えていないこと。先に述べたように、取材でミステリー作家としての推理を披露しただけなのに、「浜口は、終始一貫、話を一般化しようと熟考しながら慎重に語った」と、あたかも犯人が告白しているかのように描いている。
捏造されているコメント
連載の最終回ではこんなくだりがあります。
「ハウス食品から“身代金”を受け取ろうとして、パトカーに追跡されたシーンについて、あれは、危なかったですねと水を向けると、感情たっぷりに語った。
『うん、危なかった。危なかった……。パトカーに追われて逃げるいうのは、普通の人は多分、わからんと思うけど、必ず“パニくる”んですわ。心臓バクバクしますから。だから、実際のカネの受け渡しで、表に出るのはもうアカンとなった』」これは、以前、私が一方通行の道を原付バイクで逆走してしまい、パトカーに追いかけられたときの体験を話したものです。それを「バイク」や「一方通行の逆走」という部分を切って、グリ森事件の文脈に無理やりつなげています。
文頭の「危なかった」という感想と、最後の「だから」から始まる一文は、彼らに捏造されたものですが、それがあるために、まるで実行犯が語ったようになっています。
他にも、私が言っていないのに、「俺に土地カンがあるから疑われとる」とか、「グリコに恨みがあって押し入ったんではないですよ」など、いかにも事件に関係している人物であるかのように、コメントが作られているのです。
さらに許しがたいのは、私の住民票を市役所から勝手に取得していることです。調べたところ、東京の行政書士に申請させて取得していましたが、このことは担当編集者が認めています。何十年も前ならこうしたことも行われていたようですが、今の時代に許されることではありません。
一連の取材経緯について、執筆した岩瀬氏に尋ねると、
「この記事に関しては、何もお話ししません」
と語るのみ。「週刊現代」編集部はこう回答した。
「現時点で申し上げることは何もございません」
最後に、黒川氏は手記を発表した動機について、こう記す。
彼らは私の名前を仮名にさえすれば、プライバシー侵害や名誉毀損の責から逃れられると勘違いしているようですが、決して許されることではありません。これまで私は講談社から、数冊の著書を出していますし、現在も小説の執筆依頼を複数受けています。これまでの関係を一切無視して、私に何らきちんと確認することなく、「あなたが『21面相だ』」と題した記事を書かれたことに、たとえようのない激しい怒りを覚えています。
ましてや家族や親族まで一方的に巻き込まれています。講談社から責任ある回答を得るまで、こちらから身を引くつもりは一切ありません。だからこそ、作家・黒川博行として、今回、手記を綴ることにしたのです。
「ミステリー作家 黒川博行「怒りの独占手記」週刊現代デッチ上げで「かい人21面相(グリコ・森永事件)」にされた私」『週刊文春』(文藝春秋、2011年10月27日号)P39〜41
岩瀬もさることながら、講談社の卑劣な「裏切り」ともいえる仕打ちに怒りを抑えられない黒川氏。黒川氏の怒りの告発は、第2弾の手記に続きます。
★参考資料
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