KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

POSTING!!ー検証・日垣隆「新聞投稿(書評)の虚実」

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kafkaesque1924@gmail.com
※2013/03/19追記:エントリーを更新しました。



Amazonレビュアー【懸垂百回】さんも指摘していますが*1、日垣センセイの代表作の一つとも言える『少年リンチ殺人ームカついたから、やっただけー《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)が、突如絶版になったようです。日垣センセイの公式サイト『ガッキィファイター』の有料メールマガジンの目次でも「絶版決定か」(第428号、第429号)*2、「絶版間近(?)」(第430号、第431号)*3と謳われています。同書の新品はAmazonでも数ヵ月前から品切れの状態が現在に至るまで続いています。

そもそも、版元の新潮社のサイトでの販売もずっと品切れであり、著者プロフィールにある『ガッキィファイター』へのリンクも切れたままという惨状ぶりです。

噂では、新潮社サイドが日垣センセイの「弟の死」に関する新聞記事*4及び判決文*5などの存在に気づいて、同書の虚偽の記述*6が問題になることを恐れ、慌てて同書を絶版にして責任回避した可能性があるそうです。もしこれが事実ならば、事なかれ主義もいいところですが……。



日垣隆の新聞投稿(書評)

日垣センセイはライターデビュー前(?)*7の失業時代に、地元紙の信濃毎日新聞へ複数回書評を投稿し、生計を立てていました。


生活を賭けた投稿

社会に出てから一九八七年に三度目の失業をし、当時は好景気ではありましたが、私は単独で不景気に沈んでおり、なかなか再就職先は見つからず、次第に面倒くさくなって、しばらく失業手当でぶらぶらしようかと思い始めていましたら、手続きをしていなかったため、給与の六割程度が振り込まれるのが三カ月も先だということが判明し、かなりあせりました。

(中略)

地方紙で記者をしていた親しい友人が、生活の苦しさを見かねたのか、「うちの夕刊には読者投稿による書評欄があって、(投稿欄としては)けっこういい原稿料を出している」と教えてくれました。

私は帰宅後さっそく、前日に出たばかりの『サラダ記念日』という新刊の書評を六〇〇字にまとめてその日のうちに投函し、それは翌週の新聞に掲載されます。掲載されたことより、すぐに原稿料(五〇〇〇円分の郵便為替)が送られてきたことに、私たち一家は安堵いたしました。東京法令での二週間あまりの仕事の対価を、これなら数時間で稼げます。

これに味をしめ、お金がもらえるなら毎日何本でも書きたいところですが、同じ新聞にばかり投稿するわけにもゆきません。ある程度の間を置かないといけない(続けて同一人の投稿は掲載しにくい)でしょうから、「わたしの読後感」というその欄へは、ちょうど四週間ごとに投稿することにしましたら、まんまとすべて掲載されました。

ほかにもお金になる読者投稿欄のある新聞や雑誌を探し、その媒体にあわせていろいろ書いては送り、そうやって得た臨時稿料で五人家族の糊口をしのぐことになります。

幸いにも、送った原稿が没になることは一度もありませんでした。

なにしろ五人の生活がかかっていましたから、没になどされては困ります。



一冊の本との邂逅

前述した初投稿の対価は六〇〇字で五〇〇〇円でした。これを四〇〇字詰め原稿用紙に換算すると、一枚あたり三三三三円になります。端数が出てしまい割り切れませんね。ともかく、素人の原稿料としては確かに悪くはなかったのかもしれません。

そんな時期に、千葉敦子さんの『ニューヨークの24時間』という本に出合(原文ママ)います。私は偶然、この本を読んでプロの物書きになろうと決意しました。突然そう決めたのです。

つい先ほど、久しぶりに同書を書庫から引っ張りだして開いてみると、そこに古い新聞の切抜きが挿まれていました。

三度目の失業をしていた、二八歳の私が書いたものです。前述した「わたしの読後感」という欄に投稿したものの一つでした。


《わたしの読後感
  人生へのヒントが豊富
   千葉敦子『ニューヨークの24時間』彩古書房

欧米諸国では、女性の社会進出がかなりの水準に達しています。創造的な在宅勤務や、とりわけコンピューターを駆使した分野での活躍は目ざましいものがあるようです。

これに反してわが国では、結婚・出産・老人介護などのために、やむなく職場を去っていく女性が、むしろ増えてさえいるというのが現実です。

その一方で、「日本企業のオフィスには、訪問者にニコニコ笑ってお茶のサービスをするだけの若い女性が大勢いる」(アルビン・トフラー第三の波』)と驚かれてしまうという皮肉な状況下にあることも否定できません。

この本の著者である千葉敦子さんは、現在もなお乳ガンの再発とたたかいながら、日米を主な舞台に活躍している女性ジャーナリストです。

日本人には「自分の考えをきちんと表現できる人がびっくりするほど少数」と嘆きつつ、自分の納得のゆかない仕事に就いたり、本来の能力を生かせない職業を選んだりしている人たちが多いことを「時間のむだ使い」ではないか、と彼女は懸念します。また、欧米諸国では在宅勤務が男性のあいだでも増えてきた結果、従来よりも家庭に男性が進出し始めている、という指摘なども興味をそそられるところです。

人生を有効に生きたいと願う人たちに、この本は刺激的なヒントをたくさん提供してくれることでしょう。

日垣隆、自由業、28歳)》


確かに本文は、ぴったり六〇〇字でしたが、今の時点で読み返してみると、紋切り型の筆運びに赤面するほかありません。ただ、紋切り型であるとは自覚していたので、「欧米では」というような書き方が本当に正しいのかどうかを見極めるためにも、その後、借金をしてでも世界中を見て回る努力は重ねました。


変化の波

こうして、アルバイトをこなしながらの投稿生活は、およそ四カ月で終止符を打ちます。

私は突然、プロになろうと思ったのです。しかも、書きたいことだけを書くプロになろうと思ったのでした。最初は広告コピーを書くことで主たる生計を立て、五年ほどでそこからも足を洗います。広告の仕事はとても楽で儲かりましたが、「書きたい」ことではありませんし、多少うまく書けるかどうかというくらいで、ほかの誰かが担当しても似たようなものが仕上がる分野です。

日垣隆『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第一刷発行/2005年3月25日第二刷発行)P10〜15


日垣センセイが実際に当時の信濃毎日新聞夕刊の読者投稿欄「わたしの読後感」に書評を投稿していたのか。「信濃毎日新聞データベース」で調べてみると、日垣センセイの投稿が見つかりました。以下は、それをスキャニングしたものです。


信濃毎日新聞』(昭和62年2月25日夕刊)


尚、新聞投稿の原文は、上記の『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第一刷発行/2005年3月25日第二刷発行)での記述とは、一部異なるものでした。

《わたしの読後感
  人生へのヒントが豊富
   千葉敦子『ニューヨークの24時間』彩古書房

欧米諸国では、女性の社会進出がかなりの水準に達しています。創造的な在宅勤務や、コンピューターを駆使した分野での活躍は目ざましいものがあるようです。

これに反してわが国では、結婚・出産・老人介護などのために、やむなく職場を去っていく婦人が、むしろ増えてさえいるというのが現実です。

その一方で、「日本企業のオフィスには、訪問者にニコニコ笑ってお茶のサービスをするだけの若い女性が大勢いる」(アルビン・トフラー超大国日本の神話』)と驚かれてしまうという皮肉な状況下にあることも否定できません。

この本の著者は、現在もなお乳ガンの再発とたたかいながら、世界を舞台にして活躍している女性ジャーナリストです。

日本人は「自分の考えをきちんと表現できる人がびっくりするほど少数」と嘆きつつ、自分の納得のゆかない仕事に就いたり、本来の能力を生かせない職業を選んだりしている人の多いことを「時間のむだ使い」ではないか、と懸念しています。また、欧米諸国では在宅勤務が男性の相当部分を占めるようになった結果、従来よりも家庭に男性が「進出」し始めている、という指摘なども興味をそそられるところです。障害者の職業的自立も日本とは比較にならないと思います。

人生を有効に生きたいと願う人たちに、この本は、刺激的なヒントをたくさん提供してくれることでしょう。

日垣隆長野市、自由業、28歳)》

信濃毎日新聞』(昭和62年2月25日夕刊)


書評の中で引用している「日本企業のオフィスには、訪問者にニコニコ笑ってお茶のサービスをするだけの若い女性が大勢いる」の出典が、記事の原文では【アルビン・トフラー超大国日本の神話』】と明記されているのに対し、『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第一刷発行/2005年3月25日第二刷発行)P13〜14では【アルビン・トフラー第三の波』】に何故か変更されているなどの相違点が見られます。


因みに、『信濃毎日新聞』における日垣センセイの投稿は他にも複数見つかっています。「サラダ記念日」(昭和62年6月24日夕刊)、「黄花菜よ、いま再び」(昭和62年9月2日夕刊)、「大映テレビの研究」(昭和62年11月18日夕刊)の三点です。


信濃毎日新聞』(昭和62年6月24日夕刊)



信濃毎日新聞』(昭和62年9月2日夕刊)



信濃毎日新聞』(昭和62年11月18日夕刊)


こうして読んでみると、前記の日垣センセイの『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第一刷発行/2005年3月25日第二刷発行)における「ちょうど四週間ごとに投稿(P11)」「前述した初投稿*8(P12)」「投稿生活は、およそ四カ月で終止符を打ちます。(P14)」との述懐が、単なる記憶違いである可能性が高いことが分かります。



★参考資料

アルビン・トフラー - Wikipedia

第三の波 (トフラー) - Wikipedia

売文生活 (ちくま新書)

売文生活 (ちくま新書)

第三の波 (中公文庫 M 178-3)

第三の波 (中公文庫 M 178-3)

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

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*1:日垣隆は「弟の死」の真相を明らかにすべきだ

*2:http://gfighter.net/003022012/121231003958.php http://gfighter.net/003032013/130103003987.php

*3:http://gfighter.net/003032013/130115003995.php http://gfighter.net/003032013/130122003996.php

*4:サンクチュアリ1973.7.23ー検証・日垣隆「弟の死」の真相 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) DARKER THAN DARKNESS1977.1.22ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論A) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*5:世界の終りと1977.1.21ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*6:The History God Only Knowsー検証・日垣隆「弟の死」の謎 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*7:肝心のデビュー時期に関しては、1986年〜88年、または1982年など諸説ある。→ 痴愚神自讃ー検証・日垣隆『電子書籍を日本一売ってみたけれど、やっぱり紙の本が好き。』(その参) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*8:『売文生活』(ちくま新書、2005年3月10日第一刷発行/2005年3月25日第二刷発行)P11〜12では『サラダ記念日』の書評が初投稿となっているが、実際には『信濃毎日新聞』(昭和62年2月25日夕刊)に載った千葉敦子『ニューヨークの24時間』(彩古書房)の書評が先である。『サラダ記念日』の書評は同新聞(昭和62年6月24日夕刊)に載っている。