・初めて当エントリーを読まれる方は「日垣問題の記録」、「日垣隆(Wikipedia)」、「ガッキィスレまとめサイト@ウィキ」の御一読をおススメします。
・当ブログへの御意見・御感想は、下記のメールアドレスまで御連絡下さい。
kafkaesque1924@gmail.com
・日垣センセイの代表作『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)の評判に関する検証の一環として*1、当ブログでも取り上げたことのある小谷野敦氏が、自身のブログ『猫を償うに猫をもってせよ』にて、名指しではないありませんが、【懸垂百回】さんのAmazonレビュー:玉石混淆に「反論(?)」しています。下記のリンク先は、そのエントリーです。
これに対しては、懸垂百回さんが同レビューのコメント欄にて、秀逸な突っ込みを入れていますが……実は上記のエントリーにて、小谷野氏は懸垂百回さんだけでなく、日垣センセイの検証を続けている僕(当ブログ管理人)に対しても、これまた名指しではありませんが少しだけ言及しています。
なんだか日垣隆を攻撃している匿名の卑怯者らがいて、私にまで突っかかってくる。匿名の奴は相手にしないことにしているのだが、うるさいから略説しておく。
『刑法39条は廃止せよ! 是か非か』(洋泉社、新書y)に私は寄稿しているのだが、そこで日垣の『そして殺人者は野に放たれる』を褒めているのがいかんらしい。なんでいかんのか読んでも分からんから、気違いだろうと思う。気違いにとっては、刑法39条廃止というのは嫌な話であろう。
小谷野敦『猫を償うには猫をもってせよ』「2012-10-08 ディレンマ」
小谷野氏と言えば、僕のtwitterのアカウントに対しても、以下のようなリプライ*2を飛ばしてきていました。
@kafkaesque1924 あなたの主張なるものはどこに書いてあるのでしょう。
— 小谷野敦さん (@tonton1965) 8月 5, 2012
@kafkaesque1924 他人の意見を紹介してないで自分の言葉で語れよ、気違い。
— 小谷野敦さん (@tonton1965) 10月 1, 2012
酷いのは、小谷野氏が自分の名前でわざわざエゴサーチして、気に食わない他者のツイートに突撃をかましてきたことだけではありません。2回目のリプライで「気違い」と放送禁止用語まで使って僕のことを罵倒し、その後、僕のアカウントを一方的にブロックして現在に至っていることです。しかも、今度はブログで(名指しではないですが)罵倒とは……。
蛇足ながら、「反論(?)」のエントリーで、小谷野氏は懸垂百回さんに対して「匿名卑怯者は、刑法39条を廃止するなら「責任主義」を抛棄しなければならない、と言う。」などと述べていますが、懸垂百回さんは上記のAmazonレビューの中でそのようなことは一切言っていません。自分に対する批判を捏造し、或いは歪曲した批判に対して「反論」を試みる邪道な手法。これこそ典型的な藁人形論法ではないでしょうか。
●少年法の聖域?
本題。日垣センセイは、『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)のP214〜215、同223〜225にて、「事故」で亡くなった当時13歳の自身の弟さんの死因を「(弟さんの同級生による)他殺」とする虚偽の記述をしていました*3。その中で、少年法についてもデタラメを書いています。
弟
自宅に帰って私は、六法全書をひもとき少年法のページに目をとめた。かつて私は、この法律に理不尽を感じて大学は法学部を選んだのである。
私の弟は、十三歳でその命を閉じた。両親は、教師たちの過失による「事故」だと、今でも信じようとしているのだが、うすうす気がついているのではないか、と私は感じている。弟と私は同じ中学に同時に在籍していたから、「事故死」のあと、後輩たち(弟の同級生や同学年生)に事情を詳しく聞くことができた。裁判が始まったのは、私が高校に進学して間もなくだった。だがそこには、最も裁かれるべき者が欠けていた。弟を直接、四メートルもある除雪溝に突き落として絶命させたのは当時十三歳の少年だ、という事実を私は直接本人からも、そこに居合わせた者たちからも聞いていた。相手は、刑法(第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない)および少年法に基づき、取り調べさえ受けなかった。最初から「なかったこと」にされた。だから、私たち遺された家族の怒りは、そのような理不尽な状況に追いやった教師たちに向けられてきた。
日垣隆『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)P223〜224*4
少年犯罪では、原則として14歳未満の犯罪は「責任能力無し」として罰せられません。このことは刑法41条の「責任年齢」の条項が根拠となっています。
(責任年齢)
第41条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
刑法41条「責任年齢」
近代刑法は責任刑法のため、「責任年齢」の問題も、行為に対する責任非難ができない場合には刑罰を科すべきではないという責任主義の大原則がベースになっています。
さて、突き落とした少年が14歳未満であれば、「責任能力無し」として、犯罪を構成する要件の一つである有責性を満たせませんから、犯罪不成立として罪には問われません。しかしながら、他者を突き落すという行為は既存の刑法上の殺人(未遂)、傷害(致死)、過失致死のいずれかに該当します。
日本のhttp://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO168.htmlの第3条及び第6条には、以下のような条項があります。
(審判に付すべき少年)
第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
少年法第3条(審判に付すべき少年)
(通告)
第六条 家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、これを家庭裁判所に通告しなければならない。
2 警察官又は保護者は、第三条第一項第三号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、又は通告するよりも、先づ児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、その少年を直接児童相談所に通告することができる。
少年法第6条(通告)
「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」(少年法第3条2項)は、罪には問われない(刑罰を加えられない)ものの、警察などの取り調べを経て、家庭裁判所に通告・送致されるか、または児童相談所に通告されることになっているのです(同法6条2項)。重大な犯罪行為をしでかした場合、当然でしょう。そもそも、警察、家裁及び児童相談所には、捜査及び裁判資料などの公的記録が残りますから「取り調べさえ受けなかった。最初から「なかったこと」にされた。」などまずありえません。
因みに、本書*5の裏表紙には、以下のように書いてあります。
長野県の狭い地域で、相次いで起こったリンチ殺人。弟を守るため、ろくに顔も知らぬ少年八人になぶり殺された宮田君。三カ所を連れ回されながら十五人の暴行をうけ絶命した百瀬君の遺体には、小便がかけられていた。残酷な犯行事実は少年法の聖域に消え、さらに子の罪を認めぬ親の言動に、遺族は際限なく苦しむ。少年犯罪の理不尽を告発する慟哭のノンフィクション、増補改訂版。
日垣隆『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)裏表紙
上記の裏表紙の記述が日垣センセイ本人によるものかは、判然としませんが……「少年法の聖域」とは、お門違いも甚だしいのでは。
★参考資料
Amazonレビュー:取材が下手(魚拓、※2012年8月29日閲覧)
Amazonレビュー:日垣隆は「弟の死」の真相を明らかにすべきだ
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO168.html

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*1:WOLF'S DEMAー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』の評判(補論) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
*2:小谷野敦あの子がほしいあの子じゃ分からん on Twitter: "@kafkaesque1924 あなたの主張なるものはどこに書いてあるのでしょう。" 小谷野敦あの子がほしいあの子じゃ分からん on Twitter: "@kafkaesque1924 他人の意見を紹介してないで自分の言葉で語れよ、気違い。"
*3:[日垣隆「弟の死」]記事一覧 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)
*4:日垣隆『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)は、月刊誌『現代』(講談社、1998年2月〜5月、同年7月号)に全5回に亘って連載された「暴発―長野・少年リンチ殺事件全記録」に加筆修正して所収した単行本『少年リンチ殺人「ムカつくから、やっただけ」』(講談社、1999年6月30日第1刷発行)の文庫版である。引用部分の記述は、単行本のP231〜232にも同様のものがある。