KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

A Whole New History God Only Knowsー検証・日垣隆「弟の死」の謎(補論)

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※2012/9/26追記:エントリーを更新しました。日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(太田出版、1999年5月22日印刷/1999年5月28日初版発行)P55の記述を追加。


日垣隆は神戸連続児童殺傷事件を境に、弟さんの死を「事故」から「他殺」に書き換え始めていた。

これまで当ブログでは、日垣センセイの著作等における弟さんの死*1の記述の変遷ぶりを検証してきました。以下はそのエントリーのリンク先です。

The History God Only Knowsー検証・日垣隆「弟の死」の謎 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)


上記のエントリーは、2012年3月10日にアップしたものですが……その後も機会あるごとにちょくちょく調べていくと、僕自身が見落としていた記述がまだあることが判明して、その都度エントリーを更新していました(読者の皆様、この場を借りてお詫びします)。一応、日垣センセイの著作等は一通りチェックしていたとはいえ……。

前置きはこの辺にしておいて、本題に入りますが、今回も改めてチェックしていたところ、日垣センセイが毎日新聞社発行の週刊誌『エコノミスト』(1997年7月15日号)誌上で連載していたコラム「敢闘言」にて、1997年2月〜5月にかけて発生し、同年6月28日に犯人の少年が逮捕された神戸連続児童殺傷事件を取り上げる中で、次のように書いていたのを発見しました。

週刊朝日』七月一一日号に、「見せしめ」として香港で処刑された中国人の頭部がずらりと並んだ写真が載っている。一世紀前のことだ。人は残虐な一面をもっている。その事実は認めたほうがよい。原書房から出た図説三部作『拷問全書』『自殺全書』『死刑全書』を見れば、一層そのことが実感される。他人様はどうだか知らないが、少なくとも私は殺意を抱いた瞬間が何度かあるし、中三の夏、弟を殺した教師たちへの復讐を実行しても二年くらいで出てこれるのではないかと考えたこともある。まだ自分が生きた証などないと思えた当時、復讐が唯一の存在証明になるとさえ中三の私には思えた。あの犯行声明に、「ボクをせめてあなた達の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたいのである」の一文を見つけたとき、私は涙を抑えることができなかった。報道陣は一様に挫折とも殺意とも無縁のエリートばかりなのか、ただ「残酷」「信じられない」「なぜ少年が」を繰り返すばかりである。当時の私と少年を分けたものがあるとすれば、動物殺傷に私は快感を抱かなかったことと、「卒業するまで学校に来るな」と言い放つ教師が私の前には現れなかったということくらいだろうか。思うに、少年は、ある種の自殺をしたのだろう。彼の通う中学の校長は「少年を犯罪に追い込んだ要因は学校側にはない」と言い切った。腐っている。もちろん少年の最大の罪は、まるで病棟のような義務教育から最も自由に生きていた淳君に、刃を向けてしまったことだ。

日垣隆「敢闘言」『エコノミスト』(毎日新聞社、1997年7月15日号)P11


また、上記の『エコノミスト』(1997年7月15日号)誌上の連載コラム「敢闘言」に加筆修正を加えて所収した単行本の『敢闘言 さらば偽善者たち』(太田出版、1999年5月22日印刷/1999年5月28日初版発行)P267と、P55、同書の奥付にある著者紹介欄のプロフィールでは下記のようになっています。

人は残虐な一面をもっている

週刊朝日』七月一一日号に、「見せしめ」に香港で処刑された中国人の頭部がずらりと並んだ写真が載っている。一世紀前のことだ。人は残虐な一面をもっている。その事実は認めたほうがよい。図説三部作『拷問全書』『自殺全書』『死刑全書』(原書房)を見れば、その実感はさらに強まる。他人様はどうだか知らないが、少なくとも私は殺意を抱いた瞬間が何度かあるし、中三の夏、弟を殺した者たち*2への復讐を実行しても二年程度で出で(原文ママ)これるのではないかと考えたことも実際ある。まだ自分の生きた証などないと思えた当時、復讐が唯一の存在証明になるとさえ中三の私には思えた。あの犯行声明に、「ボクを、せめてあなた達の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたいのである」の一文を見つけたとき、私は思わず息をのんだ。報道陣は一様に挫折とも殺意とも無縁のエリートばかりなのか、ただ「残酷」「信じられない」「なぜ少年が」を繰り返すばかりだった。当時の私と少年を分けたものがあるとすれば、動物殺傷に私は快感を抱かなかったことと、殺意を和らげてくれる友達や彼女がいた、ということくらいだろうか。

思うに、少年は、ある種の自殺をしたのだろう。

彼の通う中学の校長は「少年を犯罪に追い込んだ要因は学校側にはない」と言い切った。腐っている。もちろん少年の最大の罪は、まるで病棟のような義務教育から最も自由に生きていた淳君に、刃を向けてしまったことだ。

一億二〇〇〇万人もいれば、一人くらいあのような少年は出現してしまうのだろう。なお、校長が卒業式後にストリップに直行するのは御自由だが、他人に見つかる覚悟が彼らには欠落している。
P267


他方、私の実弟は、刑法上の責任無能力者*3に殺されている。そのことは、別のところで最近になって初めて書くことができた(近刊『暴発』講談社*4 )。
P55


日垣隆

作家、ジャーナリスト。1958年、長野県生まれ。中三で弟を殺され、高三のとき兄が分裂病*5に、家族は崩壊する。東北大学法学部在学中に学生結婚。卒業直前に大病を患い、体重が減ったほかは奇跡的に快復。あとはオマケの人生と腹をくくる。販売員、書店員、配送係、歩合制のセールスマン、出版社の営業兼コンピュータ担当兼編集を経て、87年に独立。

29歳で処女作『されど、わが祖国』を上梓。その後の主な著作として、『大学の冒険』『松代大本営の真実』『ご就職』『学問のヒント』『子どもが大事!』『暴発』など。ドキュメント番組の企画、ラジオ番組のパーソナリティも務める。死にかけたのは総計三回、失業も三回、うち倒産が一回、子どもは三人。仕事部屋は、長野市と豊島区にある。

日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(太田出版、1999年5月22日印刷/1999年5月28日初版発行)P267、P55*6、奥付(頁数不明)*7



さらに、上述した単行本の文庫版でも。

人は残虐な一面をもっている

週刊朝日』七月一一日号に、「見せしめ」に香港で処刑された中国人の頭部がずらりと並んだ写真が載っている。一世紀前のことだ。人は残虐な一面をもっている。その事実は認めたほうがよい。図説三部作『拷問全書』『自殺全書』『死刑全書』(原書房)を見れば、その実感はさらに強まる。他人様はどうだか知らないが、少なくとも私は殺意を抱いた瞬間が何度かあるし、中三の夏、弟を殺した者たち*8への復讐を実行しても二年程度で出てこれるのではないかと考えたことも実際ある。まだ自分の生きた証などないと思えた当時、復讐が唯一の存在証明になるとさえ中三の私には思えた。あの犯行声明に、「ボクを、せめてあなた達の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたいのである」の一文を見つけたとき、私は思わず息をのんだ。報道陣は一様に挫折とも殺意とも無縁のエリートばかりなのか、ただ「残酷」「信じられない」「なぜ少年が」を繰り返すばかりだった。当時の私と少年を分けたものがあるとすれば、動物殺傷に私は快感を抱かなかったことと、殺意を和らげてくれる友達や彼女がいた、ということくらいだろうか。

思うに、少年は、ある種の自殺をしたのだろう。

彼の通う中学の校長は「少年を犯罪に追い込んだ要因は学校側にはない」と言い切った。腐っている。もちろん少年の最大の罪は、まるで病棟のような義務教育から最も自由に生きていた淳君に、刃を向けてしまったことだ。

一億二〇〇〇万人もいれば、一人くらいあのような少年は出現してしまうのだろう。なお、校長が卒業式後にストリップに直行するのは御自由だが、他人に見つかる覚悟が彼らには欠落している。

日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(文春文庫、2002年4月10日第1刷)P299〜300*9
初出・日垣隆「敢闘言」『エコノミスト』(毎日新聞社、1997年7月15日号)P11


従来、日垣センセイは講談社発行の月刊誌『現代』(1998年2月〜5月、同年7月号)に全5回に亘って連載された「暴発―長野・少年リンチ殺事件全記録」の最終回【(5)誹謗中傷…遺族が背負う「さらなる苦悩」】において、弟さんの死を「事故」から「他殺」に記述を変更したと考えられてきたのですが、実は神戸連続児童殺傷事件を機に「他殺」と変更し始めていたことが伺えます。しかも、雑誌掲載時は「中三の夏、弟を殺した教師たち」(『エコノミスト』1997年7月25日)としていたのを、単行本・文庫化に際して「中三の夏、弟を殺した者たち」(『敢闘言 さらば偽善者たち』)と、弟さんを死に追いやった(?)のは誰なのかという表現を微妙に変化させていることも分かります。

尚、この新事実に即して上記のリンク先の検証エントリーも更新しましたので、そちらも改めて御参照下さい。



★参考資料

神戸連続児童殺傷事件 - Wikipedia

日垣問題の記録 ~ 日垣隆 研究報告 ~: 弟(兄弟)

敢闘言―さらば偽善者たち (文春文庫)

敢闘言―さらば偽善者たち (文春文庫)

A Whole New World God Only Knows 神のみぞ知るセカイII/OPテーマ

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God only knows~集積回路の夢旅人~ テレビアニメ「神のみぞ知るセカイ」OPENINGテーマ

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神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 17-18 巻セット 画集 (週刊少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 17-18 巻セット 画集 (週刊少年サンデーコミックス)

*1:サンクチュアリ1973.7.23ー検証・日垣隆「弟の死」の真相 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) 世界の終りと1977.1.21ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) DARKER THAN DARKNESS1977.1.22ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論A) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*2:エコノミスト』(1997年7月15日号)連載分の「中三の夏、弟を殺した教師たち」から、「中三の夏、弟を殺した者たち」と単行本所収に際し、弟さんを殺したのが誰なのか微妙に変更されていることも分かる。

*3:刑法上の責任無能力者には、心神喪失者や14歳未満の者が該当する。→ 責任能力 - Wikipedia

*4:講談社発行の月刊誌『現代』(1998年2月〜5月、同年7月号)に全5回に亘って連載された「暴発―長野・少年リンチ殺事件全記録」に加筆修正を加えて所収した単行本の日垣隆『少年リンチ殺人「ムカつくから、やっただけ」』(講談社、1999年6月30日第1刷発行)のことではないかと推定される。

*5:精神分裂病の略称。現在の名称は、統合失調症である。

*6:この引用部分は、後に文庫化された日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(文春文庫、2002年4月10日第1刷)には存在しない。

*7:後に文庫化された日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(文春文庫、2002年4月10日第1刷)においても、著者紹介欄はカバーにあるが、単行本と内容が異なっており、「中三で弟を殺され、高三のとき兄が分裂病に、家族は崩壊する……」などの記述は一切無い。

*8:エコノミスト』(1997年7月15日号)連載分の「中三の夏、弟を殺した教師たち」から、「中三の夏、弟を殺した者たち」と単行本所収に際し、弟さんを殺したのが誰なのか微妙に変更されており、文庫版もこれを踏襲している。

*9:前述の日垣隆『敢闘言 さらば偽善者たち』(太田出版、1999年5月22日印刷/1999年5月28日初版発行)の文庫版。