KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

エレファント・ケースー検証・日垣隆『少年リンチ殺人ームカついたから、やっただけー《増補改訂版》』

・初めてこのエントリーを読まれる方は「日垣問題の記録」「日垣隆(Wikipedia)」「ガッキィスレまとめサイト@ウィキ」のご一読をおススメします。
※2013/3/4追記:エントリーを更新しました。脚注(主典)を追加。


・日垣センセイ、語学留学先のフィリピンにて、またもや下らないトラブルを引き起こし、学校関係者に多大な迷惑を掛けています*1 *2唐沢俊一検証blogでも取り上げられるなど、波紋が広がってますが……。


日垣隆『少年リンチ殺人ームカついたから、やっただけー《増補改訂版》』とは

2010年1月頃に出版された日垣隆『少年リンチ殺人ームカついたから、やっただけー《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)は、1999年7月頃に刊行された単行本の日垣隆『少年リンチ殺人「ムカつくから、やっただけ」』(講談社、一九九九年六月三十日第一刷発行)の文字通りの増補改訂版です。大きな変更点としては、単行本版に収録されていた講談社発行の月刊誌『現代』(1998年2月〜5月、同年7月号)の連載分の事例[1](文庫版の第一部)に、毎日新聞社発行の週刊誌『サンデー毎日』(1998年12月27日号〜99年3月7日号)に連載された事例[2](文庫版の第二部)を新たに加えた2部構成になっていることです。小さな変更点としては、冒頭に「はじめに」(P11〜12)と題した日垣センセイによる序文が追記され、巻末には学習院大学法学部教授(ヨーロッパ政治史)の飯田芳弘氏の解説(P341〜348)が載っていることです。事例[1]、[2]のいずれも少年犯罪、それも長野県で発生した集団リンチ殺人事件をそれぞれ扱ったルポルタージュであり、本書*3『そして殺人者は野に放たれる』(新潮文庫、平成十八年十一月一日発行/平成十九年二月二十日四刷)と共に日垣センセイの代表作として知られています。

また本書の場合、少年犯罪の残虐、非道、無軌道ぶりだけでなく、少年法の欠陥及び矛盾を検証し、少年犯罪被害者遺族の声を大きく取り上げた良書、ルポルタージュの名作として、ネット上でも評価が高いですが……。しかし、本当に称賛に値する傑作なのでしょうか。


●構成が破綻、インタビューもお粗末

まず事例[1]を扱っている本書の第一部ですが、これがもう事件の資料及び供述調書からの引用量が桁外れで、非常に読み辛いです。特にP132〜148、P151〜158は殆ど資料及び供述調書からの「引用」だけで、事件当時の状況や加害者の少年たちの人物像を描写しようとしているのだから、尚更酷いです。構成も何もあったものではありません。この種のルポとしては、非常に珍しいです。日垣センセイは資料及び供述調書を恣意的に引用し、丸写しすることで、客観的かつリアルな描写ができると考えているようですが……とんだお門違いというものです。なぜなら、膨大な資料及び供述調書のどれから、どの部分を「引用」して事件の場面構成を図るかで、既に書き手の作為というか、主観が著しく反映されているのですから。これでは、信憑性にも却って疑問符が付きます。「これは作者による(客観的な)ルポではなく、(主観的な)物語ではないか」と、読み手は首を傾げざる得ません。

この種のルポの場合、まずライターが資料の類をきちんと読み込んで咀嚼し、自身の中で情報を整理してから、時系列を踏まえて書いていくのが常道です。従って、無軌道に「これでもか、これでもか!」と資料などを片っ端から「引用」することは稀です。そんなことをすれば、資料を読み込んで自分の文章でまとめて書いていく書き手の筆力はおろか、構成の技量まで問題視されます。いずれにせよ、客観的かつ要点を踏まえた分かりやすいルポにはなりえません。

一方、事例[2]を扱っている第二部は第一部に比べると、資料及び供述調書からの引用は抑制的であり、この点では第一部よりも若干読みやすくなっています。とはいえ、日垣センセイによる事件関係者へのインタビューは、お世辞にも上手とは言い難いレベルです。特に加害者の親たち(P266〜267、P307〜311)へのインタビューが最悪。日垣センセイはインタビューに名を借りて、一方的に加害者の親たちを糾弾し、自身の主張を繰り返しているだけです。インタビューを通して事件に関する有益な情報なり、新事実を得ようとはしていません。この人は、単に「正義の味方」を気取って、安っぽいヒロイズムに酔っているだけではないかと、呆れてしまいます。


少年法の欠陥、問題点……?

また日垣センセイは、本書において、下記のように少年法の欠陥、問題点を指摘しています。

現行少年法の最大の問題点は、万引きなど軽微な(氏名を明らかにしたりせずに更生を期待してもいい、という意味の)犯罪と、生命にかかわる凶悪犯罪とをまったく区別せず同一に論じて、「(加害)少年の健全な育成」と「(殺人犯の)人権」を高らかにうたいあげてしまい、逆に被害者の生命と遺族の人権を完全に無視してきたことが第一。
P38

現行少年法は、万引きも殺人も同じ「非行」と一括してしまうという致命的な欠陥をもつ
P184

少年法は、万引きも殺人も、まったく同列に扱うという致命的欠陥をもっている。
P329

日垣隆『少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》』(新潮文庫、平成二十二年二月一日発行)P38、P184、P329


日垣センセイは現行の少年法について、万引きも殺人も区別せずに同列(同一)に扱うのは欠陥だ、まして「非行」と一括するなど、という論旨の発言をしています。

しかし、万引きも殺人も区別せずに同列(同一)に扱うことのどこが少年法の「欠陥」なのか。「非行」と一括することの何が具体的に問題なのかについて、論証がなされていません。これでは、非常に分かりづらいです。

現行の少年法は犯罪行為をした少年、いわゆる非行少年の犯行の結果を過大視せず、万引きも殺人も区別せずに同列(同一)に扱って「非行」とするのは、少年の人格未成熟及び可塑性を基調にしているからです。例えば大人(成人)の場合、万引きやスリなどの窃盗を常習的に繰り返す犯罪者もいます。逮捕・起訴され、裁判で執行猶予付きの有罪判決が確定しても、執行猶予の期間中に万引きやスリをやったり、実刑判決で服役しても刑務所から出所後に性懲りもなくやる犯罪者もいます。しかし現実には、万引きやスリなどの犯行がエスカレートして殺人などの凶悪犯罪になるケースは全くと言っていいほどありません。従って、ある程度の合理性を以て思考し、判断し、行動するだけの人格成熟度が成人たる犯罪者に存在すると言えます。

他方、少年の場合は成人に比べて人格未成熟などから思考及び行動に合理性が乏しいことがあるため、万引き、スリだけでなく、喫煙、飲酒、賭博などの軽微な悪事が高じて知らず知らずの間にエスカレート、とりかえしのつかない事件に……という傾向があります。本書のリンチ殺人事件の事例[1]及び[2]も、どちらかと言えば、不良たちのありふれた喧嘩が、偶然エスカレートして歯止めがきかず、というパターンに近いです。

現行の少年法が、万引きも殺人も区別せずに同列(同一)に扱って「非行」とするのは、以上が主だった理由です。そもそも日本の現行法は、非行少年の矯正による再犯防止に主眼を置いています。実際、専門家によると、日本の非行少年は諸外国に比べて矯正率が高い反面、再犯率は低いそうです*4。因みに、刑法犯に占める少年犯罪の件数は、2004年以降は減少傾向にあります*5。特に殺人はそれが著しいです。

日垣センセイは「膨大な少年法関連文献を読んで」(P177)と明言しているのですが、やはり何も分かっていないのでしょうか。まあ、知ったかぶっていい加減なことを書くのが、日垣センセイの悪癖ですから*6 *7 *8 *9

尚、日垣センセイは本書で「弟さんの死」について長々と書いていますが(P214〜215、P223〜225)、その件については、こちらを御参照下さい*10


★参考資料

Amazonレビュー:取材が下手(魚拓、※2012年8月29日閲覧)

Amazonレビュー:死人に口なし

小田晋、作田明、西村由貴『刑法39条 心の病の現在』(新書館、2006年1月25日初版第一刷発行)

少年法 - Wikipedia

少年法

法務省『犯罪白書』

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)

少年リンチ殺人―「ムカつくから、やっただけ」

少年リンチ殺人―「ムカつくから、やっただけ」

エレファント デラックス版 [DVD]

エレファント デラックス版 [DVD]

*1:フィリピン英語留学顛末

*2:【重要な問題なので、あと2〜3回ーーCG校サンディ様による、謝罪から急変した公式罵倒文への回答】

*3:日垣隆『少年リンチ殺人ームカついたから、やっただけー《増補改訂版》』(新潮文庫

*4:小田・作田・西村(2006年)P73、80〜88

*5:法務省『犯罪白書』

*6:僕は判決文が読めないー日垣隆『裁判官に気をつけろ!』尊属殺法定刑違憲事件判決文捏造疑惑 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*7:使えない駄本ー日垣隆『使えるレファ本150選』検証編 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*8:ぼくの無知を救ってくれなかったガセ本へー日垣隆『世間のウソ』検証編 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*9:赤頭巾ちゃん、オオカミ中年に気をつけてー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(結論) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

*10:The History God Only Knowsー検証・日垣隆「弟の死」の謎 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) サンクチュアリ1973.7.23ー検証・日垣隆「弟の死」の真相 - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) 世界の終りと1977.1.21ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) DARKER THAN DARKNESS1977.1.22ー検証・日垣隆「弟の死」の真相(補論A) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会) 妄想回路の夢旅人ー検証・日垣隆「弟の死」の謎(補論A) - KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)