KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

赤頭巾ちゃん、オオカミ中年に気をつけてー検証・日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(補論A)

・初めてこのエントリーを読まれる方は「日垣問題の記録」「日垣隆(Wikipedia)」「ガッキィスレまとめサイト@ウィキ」のご一読をおススメします。


Amazonレビュアー【懸垂百回】さんから、Amazonレビュー:感情的対立を煽るだけの悪しきジャーナリズムのコメント欄にて、ご指摘があった件について補論します(【懸垂百回】さん、ご指摘ありがとうございます)。因みに、ブログ管理人たる僕と【懸垂百回】さんは同一人物ではありません。念のため。

『そして殺人者は野に放たれる』(新潮文庫)P49の「法的根拠のない起訴前鑑定」について当ブログが検証したのは、恐らく、日垣センセイが起訴前鑑定のうち嘱託鑑定のことを念頭に置いていると推定したからです*1。実は、検察官が行わせる起訴前鑑定には、嘱託鑑定と簡易鑑定の2種類があります。簡易鑑定については、対象となる被疑者の同意が必要ですが、あくまで任意で実施されるものであり、そもそも法的根拠は不要です。敢えて言うならば、以下の刑事訴訟法第197条1項が法的根拠に挙げられます。

(任意捜査の原則)
第197条 1.捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2.捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

(任意捜査の原則)刑事訴訟法第197条


ついでに、日垣センセイは本書のP282でこんなことも言っています。

日本は世界一、犯罪者に優しい国であり、量刑が最も軽い国なのである。

日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(新潮文庫、平成十八年十一月一日発行/平成十九年二月二十日四刷)P282


実際には、日本は死刑存置国であり、日本の刑法には量刑の上限として、殺人罪などに死刑が設けられています。殺人犯などに死刑判決が下り、執行されることも決して珍しくありません。尚、世界的には死刑廃止国が年々増え続けており、「あらゆる犯罪に対する死刑を廃止」した国だけでも、2010年度に世界198ヶ国のうち96ヶ国になっています。EU欧州連合)加盟国の場合は全て死刑廃止国です。国連も死刑廃止に前向きであり、EU及び国連がしばしば日本に死刑廃止を強く求めているのも事実です。

日垣センセイは、日本の刑法には量刑の上限に死刑があり、死文化するどころか、むしろ死刑執行も頻繁に行われているという固い事実を棚上げにして、上記のような発言をしているのですから、苦笑するしかありません。



★参考資料

Amazonレビュー:感情的対立を煽るだけの悪しきジャーナリズム

林幸司『ドキュメント精神鑑定』(洋泉社、2006年3月20日発行)

刑事訴訟法

刑事訴訟法第197条 - Wikibooks

刑法 (日本) - Wikipedia

量刑 - Wikipedia

殺人罪 (日本) - Wikipedia

死刑 - Wikipedia

日本における死刑 - Wikipedia

世界の死刑制度の現状 - Wikipedia

死刑存廃問題 - Wikipedia

駐日欧州連合代表部「人権:エジプト情勢およびベラルーシと日本における死刑制度」

そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)

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赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)

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