KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)

主に作家の日垣隆、猪瀬直樹、岩瀬達也、岡田斗司夫、藤井誠二などを検証しているブログです。

使えない駄本ー日垣隆『使えるレファ本150選』検証編

・初めてこのエントリーを読まれる方は「日垣問題の記録」「ガッキィスレまとめサイト@ウィキ」のご一読をおススメします。


・日垣センセイの最新刊『つながる読書術』(講談社現代新書)、先日某書店にて第二刷を確認しました。奥付には「2011年12月5日第二刷発行」とあります。尚、講談社販売促進局のtwitterでは、増刷の告知ツイートは現時点でもありません。以前にも検証しましたが、「発売(2011年11月18日)直後の増刷」に該当するかは微妙ですね……。

・日垣センセイ、またもや他人のツイートを勝手に改竄して引用し、facebookにてデマを撒き散らしています。この件といい、本当に懲りない人です。



●「レファ本」とは

日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書、2006年1月10日第一刷発行/2010年11月1日第四刷発行)とは、日垣センセイが仕事の際に使う辞書、事典、年鑑、便覧、図録、ハンドブック、白書、統計集、教科書などの中から特に役立つものを厳選し、その一部を読者におススメしている新書です。

因みに、書名の一部の「レファ本」とは日垣センセイの造語であり、参考図書のことを意味するそうです。日垣センセイも本書*1のP11〜P12の「はじめに」で以下のように言及しています。

レファレンス・ブックという言葉は、もちろん以前からありました。参考図書のことです。参考文献とは違います。参考文献は貸し出されますが、参考図書は館外持出禁止マークがついているのが普通です。(略)

ところで、「レファ本」を今ネット上で検索してみると、たいてい私の造語であるというふうに言及されているので、おそらくそうなのでしょう。略しただけですから、もちろん功績はゼロです。本書は有料メールマガジン「ガッキィファイター」で連載したものをもとにして、大幅に加筆編集して成ったものです。

日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書、2006年1月10日第一刷発行/2010年11月1日第四刷発行)P11〜12


レファ本」という造語自体はざっとググってみても、日垣センセイのオリジナルであることはほぼ間違いありません。

日垣センセイは、本書において読者に「汎用性の高いツール」(P12)として参考図書の「各イチオシを、順次紹介していきたい」(P13)と、様々な分野の小難しい専門書もおススメしていますが……実は、その一部の解説には首を傾げるものがあるのです。



●得意の法律知識に間違いが……!

日垣センセイは本書の「其の一二 法治国家ゆえに」のP217〜221において、ペット六法編集委員会『ペット六法』(誠文堂新光社)を取り上げて解説していますが、その一部には以下のような記述があります。

これは、どうでしょうか。飼犬殺害について同書(『現代刑法講座第2巻』)には、器物損壊の未遂や過失は日本の刑法では不可罰だ、などと書かれているだけです(法定的符号説では器物傷害罪を認めていますがオタッキーなので省略します)。

日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書、2006年1月10日第一刷発行/2010年11月1日第四刷発行)P218


え、「法定的符号説」……!?

日垣センセイ、そのような奇怪な名称の学説は存在しません。正しくは「法定的符合説」です。法定的符合説とは、刑法上の錯誤に関する学説において、最もポピュラーな概念の一つです。構成要件(犯罪の一般的成立要件)の範囲で事実と認識の符合があれば足りるとする説であり、多くの判例はこれを参考にしています。

このことについては、専門家の方が執筆した刑法の入門書である山口厚『刑法入門』(岩波新書、2008年6月20日第1刷発行/2009年4月6日第3刷発行)のP154〜156でも解説されており、そこでも「法定的符合説」と明記してあります。

日垣センセイは、やたら小難しい高額の専門書を紹介しては「僕はこんな難解な本を読んできたんだ。凄いでしょう!」とアピールしているようですが……知ったかぶって読者におススメするのも、やめたらどうなんですか。まずは上記のような定評ある専門家の方が書いたビギナー向けの入門書で、法律についてしっかり勉強して下さい。悪意のない、単なる誤植及び誤記の可能性があるとはいえ……。

まあ、誤植及び誤記だとしても第一刷から5年近く経った第四刷でも訂正していないのは、それはそれで問題でしょう。



●既に存在しない民法の条文をわざわざ引用……?

また、日垣センセイは本書のP219でこう書いています。

民法にはこんな条文もいまだ健在です(現代表記に改めておきます)。

《旅店宿泊の先取特権は旅客、その従者および牛馬の宿泊料金ならびに飲食料につきその旅店に存する手荷物の上に存在す》(民法317条)

日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書、2006年1月10日第一刷発行/2010年11月1日第四刷発行)P219


あれ……現行の民法317条には、こんな条文は存在しません。現行法では以下の通りです。

民法第317条
旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。


日垣センセイが引用した民法317条の条文は、民法現代語化によって2005年4月1日から施行された現行法ではなく、それ以前の旧民法(最終改正:2003年8月1日法律第138号)の条文ではありませんか。この資料のP133でも一目瞭然です。

本書の奥付を改めて確認しますと、「2006年1月10日第一刷発行/2010年11月1日第四刷発行」とあります。上記の民法現代語化(民法改正)による現行法は、2004年11月25日に第161回国会において法案(平成16年法律第147号)が可決し、同年12月1日に公布の上、翌2005年4月1日から施行されているものです。本書の刊行(第一刷)前に廃止された条文をわざわざ引用してくるとは、どういう意図でしょうか。

上記の「法定的符号説(正しくは、法定的符合説)」の件といい、ここまでくると単なる誤植・誤記どころか、故意にやっているのではないかと勘ぐってしまいます。日垣センセイは、東北大学法学部卒業の学歴を売り物にしたジャーナリストでありながら、民法現代語化について実は知っていなかった可能性もあります。或いは、改正の事実自体は知っていても「現代語化」という中身を知らなかったとか。だとしたら、迂闊であり、軽率の極みですが。


いずれにせよ、日垣センセイの法律知識には、大いに疑問符が付きます。この人は本当に東北大学法学部を卒業しているのでしょうか。在学中にきちんと勉強していなかった可能性もあります。本書だけでなく、様々な著作で法律についてしたり顔で論じていますが……。贔屓目に見ても、手抜きとしか考えられません。

版元の筑摩書房も、校閲が甘すぎます。第一刷から5年近く経った第四刷でも訂正していないのは、どういうことなのか。まあ、気づいて日垣センセイに訂正を打診しても、逆ギレされるのが怖くてできなかった可能性もありますが……。



★参考資料

錯誤 - Wikipedia

先取特権 - Wikipedia

民法第317条 - Wikibooks

民法

旧民法(最終改正:2003年8月1日法律第138号)先取特権

民法新旧対照表(PDFファイル)P133

民法現代語化 - Wikipedia

民法の平成16年改正(民法現代語化・個人包括根保証の制限)について

民法の改正案(平成16年改正):民法口語化と動産登記制度

山口厚『刑法入門』(岩波新書、2008年6月20日第1刷発行/2009年4月6日第3刷発行)

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*1:日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書